SASAnote Vol.34 感謝、そして、新たなザスパのはじまりへ

まずは感謝の気持ちから伝えなければならない。

奥野僚右前監督と、J2福岡時代の縁でザスパにやってきてくれた久藤清一監督は、ヘッドコーチとして1年半、奥野さんを支え、その後、成績不振を理由に退任した奥野さんを引き継ぎ、今年7月からは、チームの残留のために全身全霊で取り組んでくれた。

チーム立て直しに、継続か、変化か、を迫られる中、「あとちょっとの所だ。」と、これまで作り上げてきたスタイルを突き詰める事を選択し、考え方の整理、プレーの強度、意識を高め、守備面での改善を図り、J2残留をつかみ取ることに成功した。

勝ち点50、16位以内というチームが掲げた目標には届かず、残留争いも最終節までもつれ込み、残留圏ギリギリの18位でのフィニッシュだったが、久藤体制になってからは、さらにチームを強固に、ひとつにまとめ、前半戦を上回る成績で、J2残留に導いた手腕は大きく評価されるべきだ。だが、そんな久藤監督も、2シーズンの指導を終え、ザスパを離れることになった。

そして、奥野さんとともに、ザスパのレジェンドとして舞い戻ってきてくれた小島伸幸GKコーチもまた、チームを去ることになった。オールドザスパファンを中心に、小島さんの帰還に胸を躍らせ、ザスパ誕生の時の様な快進撃を期待したが、現実はそう甘くはなかった。それでも、小島さんも、奥野さんや久藤さん同様、選手を第一に考え、選手に寄り添い、指導、育成に努めてくれた。

「勝ち点を拾えるGKを育てたい」と小島さんが話していたように、苦しいシーズンにおいても、GK陣が奮闘し、チームを救う場面が多くあった。個人的には、奥野さんとのコンビをもっと見ていたかったという思いはあるが、それでも、小島さんの思いもしっかりとGKをはじめ、各選手たちに伝わり、プレーで体現された2シーズンだったと思っている。小島さんがザスパのレジェンドであることは変わることはない。しばしの休息を経て、またFM GUNMAの放送席にも戻って来てほしい。

何はともあれ、久藤監督、小島GKコーチ、そして、奥野前監督と。ザスパのリスタートとなった2シーズンに力を尽くしてくれたことに、「ありがとうございました」という感謝の言葉以外にはない。

そして、ザスパは、J1浦和で監督経験のある、大槻毅氏を新監督に迎え、2022シーズンのスタートを切る。ザスパが、J1で指揮を執った経験がある監督を迎えるのは、2010年から3シーズン率いた副島博志監督、2017年の森下仁志監督に次いで3人目になる。(*J1指揮経験の監督に、誤りがありましたので修正しました。大変失礼しました。12/18)

オフシーズンに入り、聞こえてくる声は、継続路線だっただけに、この展開は当初、描いていた「プランA」とは異なるものなのかもしれない。それでも、直近の浦和を率いた指揮官の監督就任は、ザスパサポーターのみならず、Jリーグファンの大きな話題となって受け止められ、大きなインパクトを与えている。

大槻監督は、2018年に開幕から勝利がなかった浦和の監督にシーズン途中から就任し、初の監督業ながら、後任監督就任までの間、公式戦4勝2分けとチームの立て直しに成功、その後、2019年にも、シーズン途中から監督に就任し、翌2020シーズンまで監督を務めた。

残念ながらタイトルには恵まれなかったが、戦術や分析に優れ、戦うメンタリティーを選手たちに注ぎ込める指導者として評価が高い。また、オールバックの髪形に、スーツ姿、睨みを利かしたスタイルで指揮を執ることから、「組長」、「親分」などと呼ばれ、キャラクターとしても話題になった指導者だ。

また、キャリアを見れば、監督のみならず、ヘッドコーチや分析担当、ユースの監督や育成部門、強化部門など、チームに関わる様々な部門を経験し、活躍してきた人物で、広い視野でチーム作りに力を発揮してくれるものと期待する。

来季の陣容はこれからだが、細貝萌や渡辺広大、進昂平、山田晃士、山中惇希など、縁のある選手も多く、新シーズンもともにザスパで戦ってくれるのならば、スムーズなチーム作りへとつながるのではないだろうか。

期待は大きい。だが、ここはザスパでもある。簡単ではない現実をどう乗り越えるかがカギになる。

当たり前だが、浦和とは違い、規模が小さい。戦力面でも、どれだけ大槻新監督の希望に沿う体制が構築できるかは不透明である。ザスパで成功するには、選手能力を引き出し、見極め、組み合わせ、最大限の効果を生み出すことが重要だ。理想を追えば現実にぶつかり、泥沼へとはまっていく、また、現実を見すぎれば、つまらない、面白くないと揶揄され、チーム内外のモチベーションや雰囲気を維持することの難しさにもぶつかることになるだろう。

そうした監督、チームをクラブが支えられればいいのだが、このクラブにはそうした体力も、余裕もないのが現状だ。経営面からみても、長年、クラブ規模は横ばいのまま成長がなく、J2下位どころか、J3クラブにも劣る状況だ。また、かつてに比べ、練習環境は大きく改善されたが、チームが専有できるものでもなく、ストレスや負担がかかるタイミングも少なくない。チャレンジャーズやユースはじめ、下部組織についても、現場レベルでの奮闘は続くが、クラブとしての方針や計画は見えにくく、トップチームをはじめ、ザスパを支える組織とするに十分ではない。依然として、地域への発信力も弱く、拠点である前橋市や原点である草津町はもちろん、群馬という地域とのつながりは、ザスパと名乗って20年が経っても脆弱なままだ。そもそも、クラブ自体が、前社長の退任に対し、調査委員会なるものを設けたものの、十分な説明、アナウンスがなく、心配する県民、ファン、サポーターを他所に、時間だけが過ぎているような状況だ。チームを支えるどころか、チームがクラブを支えてくれている状況で、クラブ自体の今後の方が、正直、心配だ。

そうした変わらない歴史が繰り返され、ザスパには、ネガティブなイメージがすっかりこびりついてしまった。そして、火中の栗を拾うがごとく、ザスパに関わるのはリスクともとらえられるようになってしまっているのも現実だ。

もちろん、ザスパのために力を尽くしてくれている人も少なくない。厳しい状況でも、支えてくれるみんなのために奮闘するクラブスタッフ、クラブ初期から変わらず支援してくれているスポンサーの皆さん、年月関係なく、常にザスパに思いを寄せてくれる方、いかなる時も、スタジアムに足を運び選手たちの背中を押す応援を届けてくれる方、試合運営のためにボランティアとして活動してくれる皆さんなど、様々な人がザスパのために頑張ってくれている。そして、大槻毅新監督も、ザスパのために尽くすべくやってきてくれたひとりだ。

そうした状況で、ザスパを強くするために、クラブの成長が先か、チームの結果が先か、ここは議論が尽きないところであるが、現状は、引き続き、チームに頑張ってもらい、結果を積み上げ、ザスパ全体を強く、魅力あるものに変えていくことが現実的だと考える。

J2復帰を果たし、ザスパのレジェンドを迎え、残留をつかみ取った2シーズンが終わり、ザスパを名乗って20回目のシーズンも終了した。私は、ひとつの節目、区切りと感じている。そこに、大槻毅という魅力的な指揮官がやってきた。いつまでも残留争いという綱渡りをしているわけにはいかない。そのためにも、大槻毅新監督のもと、チームからザスパを前進させ、新たなザスパクサツ群馬の魅力、強さ、そして、歴史を作っていくシーズンの始まりとなることを期待したい。

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