打ち付ける強い雨の中でも、サポーターは、選手、チームとともに戦い続けた。その声に応えようと、選手たちは戦い続け、相模原を圧倒したが、それでもザスパは、勝つことはできなかった。
近藤壱成は、「結果は納得できるものでなく、アウェイ初勝利を目指し、雨、そして、寒い中、ホームの様な、後押しを受けていた中で、この人たちを笑顔で返したいと思ったがそれができなかった。」と悔やんだ。
近藤がそう思ったように、他の選手たちも必死に戦い続けたが、唯一のピンチに失点し、幾度もあったチャンスでゴールを決められたのは一度だけだった。
ゲームを振り返り、藤村怜は、「ほぼ相手にチャンスがない中で、合わせられてしまった。相手のクオリティーも高かったので仕方がなかった部分もあるが、ビハインドの中で慌てず、自分たちのサッカーで追いつけたのはよかった。ただ、チャンスが多い中で勝てる試合だった。」と振り返った。
勝てる内容だったし、勝たなければいけない試合だった。そして、いくら圧倒していても、やはり1失点は思わぬ形で起き得るものだ。勝ち切るためには、今年のザスパが求める2点目、3点目と、複数得点が必要なのだという事を思い知らされた試合でもあった。
試合内容は、ここ数試合と違い、自分たちがやりたいことの多くができていた試合だった。
小西宏登は、「前節、前々節も課題が多かったが、まず、プレーの強度という部分、ベースの部分が試合に出ていなかったのでそこの部分と、自分たちのパスサッカーをどこまでできるかというのを監督からも言われていた。ボールを保持したり、パスサッカーは出せたと思う。ただ、得点につながるチャンスはあったのに、決められないと、どれだけ良い試合をしても引き分けで終わる。チームがクリアしなければいない部分だ。」と悔やんだ。
この日の相模原は、ザスパの作りの部分に対して、それほど強度を上げて奪いに来ず、しっかりとブロックを作りながら待ち構えていた。故に、ザスパも、ボールを握りやすかったが、それでも、選手同士もいい距離間で、相手の間のスペースを使いながら進入することが出来ていた。
藤村も、「前節の宮崎戦では、結構、蹴りがちだった。『もっと下で、繋いでいける部分があったよね。』と話し、みんな意識して、どっちも使い分ける意識を練習から変えられたと思う。みんな、ピッチ上でコミュニケーション取ってやっていたし、距離感、関係性はよかった。」と手ごたえを口にしている。
そうして相手を押し込み、チャンスシーンでは、常に複数人が相手ゴール前に入っていき、シュートシーンも生まれたが、ゴールを奪えたのは1度だけだった。
シュートの精度と言ってしまえば、それで終わってしまうが、それ以外の部分でもゴールの確率を高めるチャレンジをしていかなければならない。
安達秀都は、「自分のプレーは、散らすプレーが多かった。もっと、縦に差し込むパスだったり、自分が、ペナルティーエリアの中に入って行くなど、相手にとって『怖いプレー』をしないと輝けないと思う、そこは練習から意識したい。」と話した。
小西の同点ゴールのシーンも、左サイドの山中惇希からのボールに対し、ゴール前に入っていた安達のシュートのこぼれ球がきっかけとなっている。
安達は、「あれは決めなければいけなかった。」とチャンスシーンを反省しつつも、「ああいう形を作り、ゴール前に入っていけたのはポジティブ。その回数を増やせば必然的にチャンスも、得点も増える。チームも、個人も意識したい。」と答えた。
対戦相手も、ザスパが何をやってくるのか大体わかっている。そうなれば、ある程度、どう対応すればいいのかも見えてくるものだ。そうした相手の守りを打ち破るためには、ザスパとしてのベースがあった上で、特に相手ゴール前のプレーで、安達が話すような『怖いプレー』をどれだけ多く増やし、守備のバランスを崩せるかもゴールを増やすためには必要だ。
目指すべきものに向かい、日々成長、進化は感じる。そこから、皆が求める、ゴール、勝利という結果を掴むために、さらに出力を上げられるか、そして、もっと怖さを出して欲しい。
次節は、首位・FC大阪とのアウェイゲームだ。
安達は、「順位を上げるために、勝ちは絶対必要。勢いに乗って、連勝を重ねていければ自分たちは良くなる。まずは首位を倒したい。相手も相当勢いはあるだろうが、でもミスを恐れていては何もできない。勇気をもって、みんなで向かいたい。」と意気込む。
沖田ザスパは、着実に成長している。ただ、良いサッカー、惜しい試合だけでは、J3優勝、J2復帰という目標は叶えられない。
近藤は、「やっぱりアウェイで勝ちたいし、自分たちのやろうとしている事、表現できることは増えている。そこを勝利に繋げないと、みんなを喜ばせられないし、自分たちも間違っていないんだと思うために勝利は必要不可欠だ。FC大阪戦は、順位という今の立ち位置よりも、到達点で勝てるか。ここの一戦は勝利で終わりたい。」と決意を口にする。
リーグ開幕から2カ月になる。思うような結果が出せないザスパに対し、サポーターからも不安の声が出始めている。そんな不安を打ち消し、共にこのサッカーで駆け抜けてもらうためには、ザスパとしての目指すべきスタイルをベースに、選手たちの思いを相手への脅威となる怖さに変え、ゴール、勝利という結果でしか示すしかない。