未知なるトップリーグの戦い、そして、誰もが初めてのSVリーグの戦いも、残すところ4試合となり、この土日はホーム最終戦となる。
シーズンを振り返るのはまだ早いかもしれないが、予想していた以上に、タフで、厳しいシーズンだった。そして、予想していた以上に、勝つことの難しさ、大変さとともに、勝つことの素晴らしさ、喜びの大きさを知る事ができたシーズンだったのではないかと思う。
応援する我々でさえそう思うのだから、渦中の選手たちにとってはさらに強く感じたのではないだろうか。
誰ひとり、順風満帆にシーズンを駆け抜けられた選手はいなかった。そして、誰ひとり、置き去りにすることなく、皆で助け合い、支え合い、チームが掲げる「全員バレー」で歩みを進めてきたからこそ、今日に至る結果を得られたのではないかと思う。
今シーズン、チームの顔として奮闘した、林田愛佳、菊地実結、藤井寧々の1999年生まれ「スリーナインズ」の3人もそうだ。
それぞれに厳しい時間を過ごした、そして、同期の強い絆に支えられチームの勝利に貢献してきた。そして、残り少ない今シーズン、まずは、ホーム最終2連戦に向け、応援してくれたファンのために勝利を届けようと思いを新たにしている。
林田愛佳は、初勝利までの道のりについて、「苦しい戦いが続くのはわかっていたので、『そうだよなぁ』という所もあったが、予想以上に負けが続くと、『こんなに苦しいんだ』というのはあったし、勝てた時はこれまでのバレー人生にないくらいうれしかった。」と振り返った。
そして、菊地実結も、「35連敗は、自分も、チームの誰も経験したことがなかったと思う。学生時代など、それなりに勝ってきた人たちがここにいる。移籍してきた人たちも含め、そんなに連続して負けたことはなかったと思う。連敗中は、私も、負けについてあまり考えないようにしていたというのが勝ってみてあった。勝った日はしばらく泣いていたが、それは、嬉しいのもあったが、やっててよかった、やっと認められた気分というのもある。」と苦しんだ思いを教えてくれた。
簡単には勝たせてもらえないと誰もが思っていたが、どこかで勝てるんじゃないか、いつかは勝てるんじゃないかという思いも、応援する側含め、正直、どこかにあったかもしれない。だが、なかなか勝利を掴めず、グリーンウイングスは初勝利までに、36試合を要することになった。
チームの強みは一体感だが、上手くいかない時間が長くなる中で、そうしたものが揺らぎそうになったこともあったという。
藤井寧々は、「負けが続いている中で、チームとしてもコンセプトを見失ったり、ひとりひとりがどこを向いて戦えばいいのかなど、自分たちが信じられなくなってしまった。『これでいいのかな』という不信感もあったが、それを乗り越えたからこそ勝利があったし、1勝できたことは、嬉しいだけでは表現できない。そして、ファンの皆さんにも、ホームで勝とうねと言ってもらってきた。だから、初勝利をホームで掴めたことが大きかった。」と教えてくれた。
開幕から振り返れば、チームは順を追って、SVリーグに慣れていったのは間違いない。
これまでのV2ではなく、トップカテゴリーで戦うための、高さや強さといったものに試合を重ねるごとに慣れていった。そして、その後は、ゲームの中の対応力が求められ、克服しようと、日々の練習から取り組んでいった。調子、コンディション、相手も見ながらメンバーを変え、内定選手も積極的に起用し、チーム内の活性化を図っていったが、初勝利を掴もうとしたが、1勝どころか、そのきっかけすらつかめずに、迷いの森をさまよい始めている様にも見えてしまう時もあった。
だが、初勝利を掴んだ日曜の刈谷戦の前日、土曜の試合で選手、チームは、自信、手ごたえをつかんだという。
藤井は、「刈谷戦は、土曜こそ負けたが、チームの中に、『絶対いけるよね!』という手ごたえが、自分も、みんなもあった。今までそういう手ごたえはなかった。マッチョさん(斎藤真由美監督)も、前日の金曜に、勝つためのイメージについて話をしてくれていて、『全員が勝てるな!』と思った時が、まさに勝てる時だと思ったのでそうなった。プレー面で言えば、日曜はつなぎが良かったと思うし、勝利を手にして、『こういう事か!』という風に思う事ができた試合だった。」と振り返った。
そして、ひとつの勝利が、迷っていたチームに、『勝ち方』を植え付けてくれたという。
菊地は、「刈谷戦の勝利は、ひとつのターニングポイントになった。チームは、その後も勝てるようになったし、勝つというのはこういう感じだよねと言うイメージが、コート内のメンバーにも、それ以外のメンバーも共有された。今まではどんな感じだったら勝てるんだろうかという疑問があったが、『こうすれば勝てるよね!』と言うのが1勝して見えてきた。それによって、バレーは楽しい、私が決めてやる、拾ってやるという気持ちが、ひとりひとりに出てきたと思う。そういうものも含めて35連敗にも意味があったんだなという事に嬉しさや、感謝の気持ちがある。」と教えてくれた。
ひとつの勝利をきっかけに、勝ち方を知ったチームは、翌週のアランマーレ山形とのアウェイ2連戦を連勝、さらに、その後のアステモ・リヴァーレ茨城との試合でも、土曜こそ敗れたが、日曜は、逆転でのフルセット勝ちを収め、直近5試合で4勝1敗と、学び得たものを勝利に繋げられるチームへと変貌することができた。
林田も、「チームとして、35連敗と苦しい時間が続いていたが、刈谷戦で1勝でき、アランマーレ戦で勝てたのはよかった。勝ったことで勝ち方がわかった。こうすれば勝てる、これをしてはいけない、そういうものがチームとして確立できたので、勝ちが増えてきた。」と話す。
刈谷戦の勝利も大きかったが、直後のアランマーレ戦でも連勝できたことは、チームにより大きな自信と手ごたえを与えてくれたようだ。
そんな3人も、チームとしての苦しさだけでなく、個人としても、様々な事を想い、葛藤しながら過ごしてきた。
元々、ユーティリティーに、ミドル、レフト、ライト、そして、セッターまで、チームのためにならばと、どんなポジションでもやり遂げてきた菊地は、リーグ後半戦にはついにリベロも任されるようになった。
「リーグ終盤のこのフェイズで自分がリベロをしているというのは全く想像していなかった。これまでもいろいろなポジションをやってきたが、また新たなポジションをやって、全く上手くいかない事もあった。でもその中で、毎週試合があって、1週間でそんなに簡単にスキルは上達しないけど、自分がどうやってチームに貢献するかを考えないといけない。そして、チームメイトはそれを考えているし、他のチームのメンバーも考えていると思う。今回のチャレンジを通じて、そういうのがやっと理解できるようになってきたので、1戦に懸ける思いもあるけど、そこに一喜一憂することなく、自分のすべきことに集中できていると思う。」と話す。
また、林田は、力強いスパイク、そして、迫力のあるブロックに、チームの士気を上げる気迫あふれるプレーで貢献してきたが、コートの中ではなく、時に、コート外からチームと仲間を支える役割も担ってきた。
そうした中で、「個人としても、試合に出られない事があったが、今、試合に出させてもらえるようになって、自分のやるべき事を、全力で楽しむという事を毎日練習の中で意識してやっている。まだ足りない事ともあるが、そこを残りの試合で出していきたい。」と、思い通りに行かなかった時間を過ごし、そこからしっかりと気持ちを整理して、試合に対して向き合っている。
そして、昨シーズンのV2時代は、チームの中心として活躍してきた藤井も、今季は、新たな選手の加入、そして、初のSVへの対応に苦慮する中で、常にゲームスタートからという訳ではなかった。
「個人としては、最初からだったり、途中からだったり、役割は様々だが、オフェンスの部分ではもっともっとできることはあると思うので、残りの試合で成長したい。」と思っている。
選手である以上、常にコートに立ちたい、自分が活躍することで、勝利に貢献したい。それは至極まっとうな事だ。だが、3人はじめ、今のグリーンウイングスの選手たちは、コート内外でやるべき役割を全うすることを心掛けている。そして、自らの成長も含め、役割を追求することが、仲間のため、チームの勝利につながると考え、日々を過ごしている。長いシーズンを過ごし、これまの状況、立場、役割を通して、様々な葛藤はあるだろうが、残り4試合、自分のため、チームのために力を出し尽くし、成長する時間を過ごしてもらいたい。
チームにとって勝てた喜びは大きなものだったが、辛く、厳しい時間も長かった。苦楽を共に過ごす仲間は、心強い存在だが、「スリーナインズ」の3人は、強い絆、信頼関係で結ばれ、お互いを支え合っている。
菊地は、「ずっと3人でいるかというとそうではないが、自分が見ていない所でも二人は『頑張っているだろうな』と、信頼しきっている。やっぱり同期の二人は、コートに立ったら一番声を掛けたくなる存在。例えば、アイカ(林田)がブロックで止めたら、ベンチからでも、自分が一番喜んでいるという自信がある!(笑)ふたりのスーパープレーが出たら嬉しいんです。」と教えてくれた。
そして、そんな林田も、「自分が苦しい時、落ち込んでいる時に声を掛けてくれるのは二人。試合で苦しい時にも声を掛けてくれるし、勇気をくれる、そして、私にスイッチを入れてくれる。自分ひとりじゃ苦しいという時に支えてくれるのは二人です。ネネ(藤井)がいるから任せられるし、ミユ(実結)はいつでも声が聞こえる。音量がすごいんです。ずっと試合を通して聞こえているので、ミユには、プレーだけでなく、たくさん支えてもらえている。今シーズン、落ち込んでしまった時もあったけど、ふたりがいて良かった。って、なんだか卒業前にコメントみたいですね!(笑)」と笑顔で二人の魅力を伝えてくれた。
また、藤井は、「昨シーズンと今シーズンは、3人ともチームに対する役割が違う。正直、昨シーズンの方がもっと中心だったと思う。だから、私もそうだし、二人も辛い時期はあった。そんな時に、なんて声を掛けたらいいんだろうと思ったけど、でも、ふたりなら絶対に乗り越えてくれると思っていたし、その時に自分もコートに立てるように頑張ろう!と思った。ふたりは、ちゃんと自分のやることを頑張って、チームの中心にいるのはさすがだなと思うし、自分も負けられない。だからこそコートに立ったら嬉しいし特別な感情はある。同年代だからと言って仲が良いとは限らない。でも、この二人とはバレーの価値観も合うし、ふたりだからこそよかったなというのはある。」と熱く語ってくれた。
単なる仲良し3人組ではなく、自分に刺激を与え、成長させてくれる存在。そして、言葉ではなく、バレーに取り組む直向きな姿勢、そして、チームのために尽くす思い。そうした強い関係性で結びついている3人であり、そんな3人が、苦しい時間を乗り越え、好調・グリーンウイングスを牽引する存在になっている。
今シーズンは限られた時間となったが、その中でも、3人が求める、さらなる成長、そして、いつも応援してくれるファンのために届けるホーム最終2連戦での勝利に向けて、力を尽くしてくれるだろう。
林田は、「どんな立場になったとしても、自分の役割を全うしたいし、試合に出て、活躍したいと言う気持ちを持って毎日を過ごしていきたい。チームが勝つために何をしたらいいのかを考えて、一試合一試合を戦いたいし、このメンバーで出来るのも残り少ない。だから、この期間を楽しみたい。苦しい時、辛い時を過ごしてきた仲間と最高の時間を過ごせるよう毎日を過ごしたい。」と意気込む。
そして、菊地も、「勝ったからと言って、簡単に行くとはだれも思っていない、逆に勝てないとも思っていない。一戦一戦、今まで通り変わらず、毎試合、リセットして、一試合づつを取りにいきたい。群馬のサポーターの皆さんは、ホームゲームで、みんなは温かい応援を届けてくれるし、アウェイでも『Let’s Go GUNMA!』をしてくれる。そんな、ファンの方々にも、もっといい姿を見せて、『最後も勝ってよかったね』と言ってもらいたい。だから、ホーム最終戦は特に力を入れて頑張りたい。」と誓う。
藤井も、「今シーズン、44試合あった中で残り試合も少なくなった。もう一度、気を引き締めて、ひとつでも多く勝てるようにやりたい。ホームでもう一度勝ちたい、みんなで勝利をしたいので、頑張りたいと思う。」とファンとともに残り試合を懸け、ともに勝利を掴みたいと願っている。
いよいよ、ホーム最終2連戦、そして、シーズンは残り4試合だ。
群馬グリーンウイングスにとって、歴史的なシーズンを最高の形で締めくくるには、選手、チーム、クラブの頑張りはもちろんだが、グリーンウイングスを愛し、支え、エールを届けてくれる全ての皆の応援が必要だ。
最後の最後まで、群馬グリーンウイングスとともに駆け抜けよう。そして、ひとつでも多くの勝利を皆でつかもう。
<今後の試合予定>
4月5日土曜 14:05、6日日曜 14:05 岡山シーガルズ戦(前橋市・ヤマト市民体育館前橋)
4月12日土曜 13:05、13日日曜 13:05 岡山シーガルズ戦(岡山県岡山市・ジップアリーナ岡山)