新シーズンのザスパ群馬が見えてきた。
リーグ最下位、J3降格となったザスパは、監督、選手の多くを入れ替え、チームを解体した。「攻撃的サッカー」をクラブフィロソフィーとして掲げ、沖田優監督のもと、ザスパイズムを伝え、チームを引き締める経験ある選手を各ポジションに配し、才能と将来性ある25歳以下の選手たちを鍛え、育てながら、J3優勝、1年でのJ2復帰を目指すとともに、その先にある、ザスパの未来へ向けた大事な一歩を踏み出すシーズンが始まることになる。
ザスパは、今季の結果を受け、武藤覚監督が退任、選手の多くも、契約満了、または、他クラブへ移籍した。現役引退し、2月に社長兼GMに就任する細貝萌も含めると、現状(12/30現在)、16選手がチームを離れる。
しかも、その選手の多くが、今季、主力として戦ったメンバーだ。
今季、リーグ戦で、半分以上の試合に出場した選手(20試合以上)17人のうち、来季もザスパで戦う選手は、6選手(風間宏希、山中惇希、高橋勇利也、髙澤優也、田頭亮太、大畑隆也)のみ、また、出場時間で見ると、フルタイムの半分以上出場した選手(1711分)8人のうち、契約更新したのは、風間宏希と大畑隆也のふたりだけだ。チーム全体もそうだが、ピッチ上の顔ぶれは大きく変わる。
新シーズンに向け、クラブは、「ザスパと言えば、こういったサッカー」というクラブフィロソフィー(哲学)をしっかり作る事から着手した。監督や選手が変わったとしても、ザスパのベースとなる部分をしっかり持つことで、迷いなく戦うためだ。
細貝社長兼GM、佐藤強化部長を中心に導き出した答えは、「泥臭く、ひた向きに戦う、攻撃的なサッカー」だ。失点を恐れることなく、前だけ向いて、ゴールと勝利のために戦い抜く。2点取られても、3点を取る。とにかく攻撃面に重きを置き、見ている人にワクワクさせる、興奮と感動を与えようというサッカーになりそうだ。
そのサッカーを実践するために、今季まで、J1札幌でコーチを務めてきた沖田氏を新監督として迎えた。直近は、名将・ペトロヴィッチ監督を支えてきた存在だが、ペトロヴィッチサッカーのコピーをやるわけではない。ペトロヴィッチ監督をはじめ、多くの指導者と共に過ごし、培ったこれまでの経験に、自らの良さ、色を出しながら、ザスパが掲げる攻撃的なサッカーを表現する。どのようなサッカーになるのか、今から楽しみだ。
一方、選手編成では、当初、外国籍選手、J1でも活躍したいわゆる「大物」と呼ばれる選手なども検討されたようだが、強化予算面も含め、難しさがあったようだ。
そうした中、選手編成の基本は、各ポジションにザスパイズムを表現できる経験豊かな選手を置き、新卒選手、Jリーガーとして数年のキャリアだが、今季、それぞれに活躍してきた選手たちなど、25歳以下で、技術、特徴があり、将来性、可能性に満ち溢れ、これから数年先のザスパを背負っていってくれる選手たちを融合させて戦うことになる。
今季のザスパを振り返った時に、個々の選手の特徴はあった、日々、勝利に向けてまじめに取り組んでくれた、苦しい中でも、チームがギスギスすることなく戦い抜くことができたと思う。ただ、時に、チームに厳しさをもたらし引き締め、また、時に、苦しい中、背中で引っ張る存在が足りなかったように感じた。
ザスパの歴史は、常に挑戦があり、どの時代も、困難、苦難に直面しながら、チームを中心に皆で乗り越えてきたものだ。クラブとして、なかなか成長できない中でも、チームが踏ん張り、背伸びや無理をしながらでも持てる力を出し尽くして、Jリーグの舞台を掴み、J2というカテゴリーを守り抜いてきた。
そして、そんなチームの中心には、常に、その時代のリーダーがいた。奥野僚右、鳥居塚伸人、高田保則、松下裕樹、渡辺広大、畑尾大翔など。彼らは、自らが先頭に立ち、相手に立ち向かうとともに、他方、仲間を鼓舞し、支え、勝利へと導いてくれた。新シーズンのザスパはそうした役割を小柳達司、風間宏希、髙澤優也、そして、復帰となった青木翔大が担うことになる。それぞれに、選手としての経験も十分だ、そして、前回、J3を戦った2018年、19年を経験している選手でもある。J3を勝ち抜く事、そして、J2復帰を掴む事の厳しさ、難しさ、苦しさ、大変さをよくわかっている存在だ。彼らが力を合わせ、発揮し、歴代リーダーの様にチームを導ければ、ザスパらしく、たくましく、頼もしいサッカーを見せてくれるはずだ。プレーはもちろん、彼らのリーダーシップに注目して欲しい。
チームの多くは、25歳以下のいわゆる若手選手で占められることになる。契約更新をした選手のほとんどは、今季、個人としても出場機会が限られるなど悔しい思いをした選手が多い。一方、Jクラブから移籍加入する選手は、今季、J3の各クラブで主力として活躍した選手ではあるが、J1、J2などのカテゴリーで実績を残した選手はいない。さらに、新卒選手も、それぞれのカテゴリーで活躍してきた選手たちだが、初めてのJリーグでの戦いになる。実績だけを考えると、全体としては、どこまでできるのか未知数であり、計算しにくい部分が多い。
ただ、選手選考にあたっては、先ほどから触れているクラブフィロソフィーに照らし合わせ、沖田監督が表現しようとするサッカーに合致した選手を選考した中で集まっている選手ばかりだ。選手それぞれの特徴と組織として目指す沖田ザスパのサッカーを落とし込むことで、より大きな力を発揮し、勝利という結果に繋がっていくだろう。そして、若手選手たちには無限の可能性がある。経験ある選手たちが、プロとしての心構え、そして、ザスパというクラブの歴史もしっかりと伝えながら、日々鍛錬を積み、培った力を表現する好循環を生み出すことで、個人としても、チームとしても、より逞しく、頼もしく、強さを見せ、勝利とJ2復帰という結果に繋がっていくだろう。
サポーターの皆さんの中には、大物の補強で、変化を感じるザスパを期待していた方も少なくないだろう。私も、そうした思いがあったし、期待もしていた。だが、現実は、なかなかに厳しい。我々は、残念ながらJ3へ降格したクラブであり、クラブの規模を含めて、新たな舞台でも、足りないことが多いという現実を受け止めなければいけないようだ。
とは言え、いつまでも、ザスパのために戦ってくれるチーム、選手たちの頑張りに甘えているわけにはいかない。
状況を好転させるためには、クラブにも強くなってもらわなければいけない。細貝新社長、そして、支える立場にある赤堀洋現社長(次期会長)にも、チーム以上の頑張りを期待したい。
特に、赤堀現社長については、今回の降格の責任を「退任」ではなく、「再チャレンジ」という形で取る覚悟だ。そうであれば、経営面での向上、そして、今なお燻り続けるクラブに対しての不満や不信感を丁寧な説明と思いやりのある対話をもってまとめ、皆のザスパへの思いをひとつにし、チームを支える大きな力へと変えてもらわなければならない。結果が求められるのはチームだけではなく、クラブも同じだ。県民、ファン、サポーターの皆さんにも、チームとともに、クラブの取り組み、頑張りにも注目してもらいたいし、ザスパに対する熱い思いがあるゆえに、意見、考えの相違もあるかもしれないが、ぜひ、手を取り合い、力を貸して欲しい。バラバラになっていては、J3を勝ち抜くことはできないし、頑張る選手たちの力になどなれるはずがないのだから。
年が明ければ、早々に新チームが動き出す。そして、新シーズンがすぐに開幕する。そのための準備の時間は、限りなく短い。今季の悔しさを2025シーズンの戦いで晴らそう。そして、J2に戻ろう。そのためには、チームも、クラブも、サポーターも、ザスパを想うすべての人たちの頑張りが必要だ。
J3優勝、そして、1年でのJ2復帰へ、さらに、その先にあるザスパの未来を切り開くために。ザスパ群馬にとって、大事な、大事なシーズンを共に駆け抜けよう。