未知だったトップリーグ・SVリーグへの挑戦が始まった群馬グリーンウイングス。開幕節のアステモ・リヴァーレ茨城戦を経て、未知だったものが少しずつ見えてきた。試合スタッツや選手のコメントから振り返り、見えてきた事、感じたことを整理しよう。
開幕節で他者を圧倒する存在感を見せ、観衆の視線を釘付けにしたのは、高相みな実だった。
164センチとアウトサイドヒッターとしては小柄だが、最高到達点303センチと抜群の身体能力を誇り、V1でも活躍してきた高相だが、グリーンウイングスでも、その魅力を如何なく発揮してくれた。
高さがある茨城のブロック陣にも果敢に挑み、得点を重ねる。バックポジションでは、得意のバックアタックを披露し、攻撃に厚みを出した。また、ディフェンス面でも、フロアギリギリで何度もボールを拾いあげ、諦めない姿勢を体現してくれた。
兎にも角にもカッコいい。集まった観衆を虜にしてしまう。また、グリーンウイングスに加入してから、あっという間にチームメイトから尊敬される存在な様で、年下の選手たちが彼女のプレー、姿勢を見習い、いい影響を与えている。
高相は、「どんな状況でも立ち向かって行く事、それは、負けていても、勝っていても。熱いプレーをやることが自分のやる事だと思っている。V1で6年やってきたので、相手の高さに対して、どう決めるか、どういうディフェンスで拾うかを考えてやっていった。戦う先頭に立ってやりたい。」とコメントでも引き付ける。
グリーンウイングスが、SVリーグ参入にあたりポイントになっていたのは、高さ、強さ、速さ、上手さといった部分にどのくらいの違いがあり、現状あるその差をどう埋められるかという事だった。
この点についても、高相は、「練習では外国人選手の高さを体現できない。私や、道下選手、白岩選手など、V1を経験した選手が、具体的にチームメイトにアドバイスをして、共有していきたい。そして、ベスト8という目標達成を果たしたい。」と話している。
頼れる存在であるとともに、プレーの質、取り組みへの意識、考え方の基準も含め、高相みな実という確かなお手本がいるのは大きい。プレーとともに、チームをさらに押し上げる活躍に期待だ。
キャプテンの角谷未波にとっても初のトップカテゴリーの戦いだったが、サーブを中心に存在感を見せた。サーブでは、2本のエースを見せるなど、この2試合でサーブ効果率22.4%という高い数字を残した。
サーブで相手を崩せるか否かは、このチームの生命線だ。それをキャプテンという立場で、しっかり表現してくれたことが頼もしい。
また、チーム全体で見た時には、「昨年に比べ、オフェンス面やフィジカル面が上がっているのを実感する。」とオフシーズンに取り組んできた部分で、成長を実感している。そして、「相手に外国人選手がいるが、対応力は、初日に比べ、2日目はできたと感じた。試合を重ねていって、『こうしよう!』というコミュニケーションが、スタッフ、選手間で出来ていたのは一体感を感じた。」とチーム内の一体感にも手ごたえを感じているのは頼もしい。
一方で、セッターというポジションを任されている立場として、「精度とコンビネーションが必要だと感じた。どうやってスパイカーを活かしきるかがセッターの役目だと思う。その部分は、試合を重ねてみて、精度が必要だと感じた。」と課題も感じている。
角谷に限らず、勝負所で、コンビネーションが乱れ、もったいない失点となるシーンはあった。シーズンの中で改善、向上をしていきたい。
昨シーズン、躍進のシーズンを過ごし、チームの顔に成長した藤井寧々も、さらに成長した姿を見せてくれた。
思い切りのよいジャンプサーブやスパイクとともに、課題になっていたレセプションでも、落ち着いて対応した。藤井は、「レセプションは、去年より自信を持って臨めた。ただ、きょう、2日目は、相手のハードサーブに引き気味だったので対応したい。」と振り返った。
また、これまでも頼もしさを見せていたアタックについても、「去年の打ち方とは変えて臨んだが、高いブロックへの対応、コースなどを意識したことを試合の中で出せた。ちょっと余裕もあったし、駆け引きもできた。」と心強い。
さらに、「アスさん(高相選手)のプレーを見ながら、自分でも試し、成長につながる所もたくさんあった。また、心の部分から強くならないといけないと思った。」とも話すなど、このシーズンの中で、『SVリーグ仕様』の藤井寧々へと進化してくれそうだ。
3人の外国人選手の内、マルティニューク・アリョーナ(アリ)とタナパン・ウィンモンラット(ガイ)のふたりがコートに立った。
アリは、高さを生かした、パワフルで、迫力あるスパイクとともに、相手の状況を良く見極め、軟打も織り交ぜながら器用な所も見せた。また、感情も出しながらコート上の雰囲気を上げてくれた。
ガイも、キレのある動きとリーチを生かしたブロックで早くも存在感を見せた。普段の優しい雰囲気とは一転、コートに立つと独特の雰囲気を出し、勝負に対する強い姿勢を見せる所に頼もしさを感じた。
個人能力としても、チームにとって大きな戦力になる事を示してくれたし、ふたりとも、日本のバレーは経験済みで、そちらの対応も問題ない。あとは、コンビネーションの向上が進めば、それぞれの良さが、さらにコート上で示され、チームの勝利につながるだろう。
もうひとりの外国人選手、リエフスカ・ナターリア(ナティ)も、会場で元気な姿を見せ、アップにも参加していた。グリーンウイングスデビューは、そう遠くないだろう。
そして、個人的に最もうれしかった開幕節の収穫は、正木七海の躍動だ。
高卒3シーズン目を迎えるサウスポーは、2枚替えを中心に、開幕節からコートに立ったが、得点が欲しい所で、しっかりと得点を重ね、チームに勢いをもたらす活躍を繰り返した。斎藤監督によれば、今シーズンに向けてジャンプ力もアップするなどフィジカル面での成長が著しいという。
これまでも、貴重なサウスポーで、迫力あるフォームから繰り出されるスパイクに魅力もあり、期待もあったが、なかなか試合で力を発揮することができなかった。ところが、今シーズンは、開幕節から期待を上回る活躍を見せてくれている。アタック決定率も47.2%と高い数字を残した。バックアタックやサーブ、レセプションでは、さらに成長の余地が残されているが、それを押しても、印象的な活躍だった。長いシーズンだ、試合を通じて、心身においてレベルアップを続け、より頼もしい存在になって欲しい。
ルーキーの閑田千尋も、2日間、多くの時間でコートに立った。
昨シーズンも、内定選手としてコートに立ったが、SVリーグでも開幕節からベンチ入り、そして、出場するなど期待の大きさが伝わる。ツーアタックも見せるなど、持ち味も見せた。
閑田は、「雰囲気や流れを変えようと思ってコートに入り、できたのは良かったが、終盤になって細かいミスや自分の弱気なプレーが出て、最後にチームを勝たせ切れなかった。みんなの声、ベンチの力を借りながら、最後まで戦い続ける事に焦点を当てたい。自分で自分を輝かせるくらいの力を身に付けたい。」と立ち向かっていく思いだ。期待しよう。
開幕節では、善戦をして、2日目の試合では、1セットを取ること合できたが、やはり、歴史と力のある、長くV1でやってきたチームは、勝負所を抑え、しっかりと最後は上回ってくる。そこに並び、上回るのは簡単ではないが、各選手が話す様に、成功を自信に、上手くいかなかったことは、次なる成長、伸びしろとして受け止めながら力強く進んで行きたい。
今回、出場機会のなかった選手たちも含め、全員が戦力であり、チームを支える力になってもらわなければ、初勝利、そして、目標のベスト8入りは成し得ないだろう。開幕節で得た、成果と次なる成長へのきっかけを個人、チームで共有して、まずは、SVリーグ初勝利だ!
<次戦リーグ戦・試合情報>
大同生命S.V. LEAGUE WOMEN レギュラーシーズン
第3戦 10月26日(土)14:05 群馬グリーンウイングス vs 埼玉上尾メディックス(大泉町・いずみ総合公園町民体育館)
第4戦 10月27日(日)14:05 群馬グリーンウイングス vs 埼玉上尾メディックス(大泉町・いずみ総合公園町民体育館)