秋田に勝利し、仙台には苦しみながらもスコアレスドローで引き分け、2試合連続で勝ち点を積んだザスパ群馬だったが、調子を上げてきた山形の前に、「いつもの」悪いザスパが出てしまい、1-4で完敗のゲームとなってしまった。

早い時間での失点、クロス対応のまずさ、不要なCKを与え、そこからの失点、そして、大量失点後にようやく反撃し、ゴール。きつい言い方になるが、まさに「いつもの」で十分伝わってしまう内容での敗戦だった。

経験豊かな風間宏希は、「入りは悪くなかったが、1点取られてから相手ペースを自分たちで修正できなかった。今シーズンを通して足りない所だ。こちらのペースにもっと、もって来れないといけない。」と振り返った。

また、武藤覚監督も、「入りは悪くなかった、前にパワーはあったが、相手にボールを渡してしまうミスがあったり、流れを掴み切れない形が続く中で、失点場面になってしまった。失点して、取りに行こうとしたことで、前後の距離が空いてしまった。1失点は想定していたが、2失点目を食らってしまい気持ち的に苦しくなってしまった。」と同様に振り返った。

様々な課題を抱える今シーズンのザスパだが、良い入りをした中で、チャンスを得点につなげる事、そこで上手くいかなくても、ピッチ内で、一体感を持ち、粘り強く戦う、耐える、守り抜くことで、もう一度、自分たちのペースを掴むことが必要だったが、この試合でもできなかった。

得点シーンは4失点後であり、遅きに失した状況ではあったが、仙波大志から川上エドオジョン智慧、樺山諒乃介、そして、スペースに走りこんできた仙波へつながり、シュート、ゴールへとつながる鮮やかなものだった。

ゴールを決めた仙波は、「サイドに起点を作れば攻撃しやすいというのは分かっていた。樺山選手も落ちてきて、スペースも空いていたので、そこに走ったら、目も合い、ボールが来た。理想のゴールになった。クロスかどうかも迷ったが、シュートを打ってよかった。目に見える結果はゴールかアシストなので、結果を出せて良かった。」と振り返った。

武藤監督も、「得点のカタチは狙い通り。」としたが、続けて、「だが、前半にもああいう形があったが、勇気を持っていけなかった。行けるところで、下げたり、やり直してしまった。最初から出せればもっと違った。」とチームが抱える課題を口にした。

 

山形戦もそう、今シーズンのこれまでの試合もそう、良いものはある、けれどそれがスタートから出ない、ゲームの中の大事な場面で表現されない、ゲームの大勢が決まってからではなく、勝負を分ける、プレッシャーのかかった場面、局面で出し切れない弱さ、脆さをどうしても乗り越える事ができない。それが、見ていて歯がゆく、もどかしく、悔しい。

チームは、次節・長崎戦に向けトレーニングを開始した。この日は久々の午前中の練習となり、いつ収まるのかわからないキツイ日差しが選手たちを照り付ける中でのトレーニングとなった。

山形戦を終え、残留圏の17位大分とは、勝ち点差15、実に5勝分の差が付いた。リーグは残り7試合、仮に全勝できたとしても、他クラブの動向次第であり、ザスパのJ2残留への道のりは限りなく厳しいものだ。もちろん、やるべきことは明確なのだが、他方、「J2残留」というものも、強いプレッシャーとしてのしかかってくる。極限状態の中で、心身のバランスをどう保てるかも大切になりそうだ。

風間は、「僕らは、1試合1試合勝ちにいかなければいけないし、プロとして1年間やるのが当たり前。そのために、目の前に集中する、日々のコンディションを良くすることを精度高くやるのみだ。」と難しい状況下でも、プロフェッショナルとしての思いを口にする。

武藤監督も同じく、「目の前の1試合しか考えていない。選手たちとは、今できるベストを尽くそうという話をしている。残留はしなければいけないが、そのためにも、目の前のゲームに集中しなければいけない。勝ち点3を取らないと、他力も何も意味がない。90分勝つためにやる、私たちは、目の前のことしかできない。」と話す。

ふたりの言葉通り、できることは自分たちの目の前にある事だけ。やってきたことを貫き通し、結果につなげるしかない。その通りであり、分かっているつもりだ。ただ、正直に言えば、応援する側もここまで相当の我慢を強いられてきている。ゴール、勝利という結果はもちろん欲しいが、結果が出なくても、我慢して、応援してきた県民、ファン、サポーターに、成長している姿を見せて欲しいし、90分間、戦い抜く姿を見せて欲しい、心震わす、強く伝わるプレーという形で。

追い詰められた状況で、自らの心をどこに置くべきか悩んでいる自分がいる。様々な困難を受け入れる覚悟は変わらないが、どう心を整理して、次の試合に臨めばいいのか、ここ最近は、迷う事が多い。

次節は、アウェイで、J1昇格を目指す長崎というタフな相手だ。難しい試合になるのは分かっている。それでも、1試合を通じて、選手、チームの思いが伝わるサッカーを届けて欲しい。それがあるだけでも、今シーズンのザスパを応援してきてよかった、苦しいけれど、ともに戦ってきたことが報われたと思う人が多いんじゃないかと思う。

J2残留はおろか、自らが信じて貫いたことも示すことができないとするならば、こんなにも悲しいシーズンはない。長崎戦含め、残り7試合。時間の猶予はない。ひと試合でも多く、選手、チーム、クラブ、応援するもの、それぞれの努力、思いが報われて欲しいと、私は強く願っている。