勝利という結果につながらず、サポーターにとっては苦しく、辛い日々が続いている。
前節・岡山戦も、終盤まで0‐0で競り合ったが、後半41分にセットプレーから失点し、勝利を奪う事も、勝ち点を拾う事もできなかった。
武藤覚監督は、岡山戦を振り返り、「良さも出たし、がんばれた所もあったが、最後のリスタートの所を許してしまい、岡山との差を見せられてしまった。抑えなければいけなかった。」と話した。
武藤監督の言う様に、ザスパも良さは出たが、接戦、ロースコア、セットプレーの強さ、そして、終盤にしっかり勝ち切る底力。振り返ってみれば、岡山の「カタチ」でしっかりやられてしまったともいえる。
14節・清水戦をもって、大槻毅監督との契約を解除し、武藤ヘッドコーチを昇格させ、立て直しを図ってきたが、就任以降、7試合を経て、未だ勝利はない(3分4敗)。大槻体制で築いてきた繋ぐスタイルを活かしつつ、守備のラインを高く保つことを意識し、長いボールも織り交ぜながら、より相手エリア、ゴールに近い所でのプレーをすることで、攻守の改善を図ってきた。また、自陣ゴール前では、粘り強い守備も増え、イージーな失点は減ってきている。
確かに、失点では、武藤監督就任前後で、1試合平均1.85失点から1.00失点へと大きく改善している。しかし、得点は、1試合平均0.57得点だったものが、0.42得点へとさらに落ち込んでしまっている。1試合平均の勝ち点を見ても、武藤監督就任前後で、0.42ptと変化がない状況だ。
課題は明白で、得点力を上げる事。これに尽きる。
武藤監督も、「チャンスは増えた。だからこそ、岡山戦は勝ちたかった。だが、チャンス作っても点を取れていない。何よりシュート数が少ない。相手よりも多く打ちたいし、点を取れるのが一番だが、そのためにも、そのチャンスを増やさなければいけない。」と話している。
徐々に、前向きなプレーは増えたことで、シュートシーン、そこから、CKやFKなどセットプレー機会も、シーズン序盤よりは多くなり、チャンス、惜しいシーンも見られるようになってきた。ただ、ペナルティエリア内でのシュートなど、決定的なシーンは、これまでと変わらず、ほとんど見られないというか、全くない。
更なる改善に向け、武藤監督は、「ゴール前に入る人数を増やすことが大事。中に入る部分も増えてきたが、もっと背後を突く動き、前に入った時のサポートは大事にしたい。」と考えている。
この日の練習でも、シュートの意識はもちろん、枠をとらえることのこだわり、仲間を追い越し、相手ゴールに迫る事や、カバーリングで攻撃に厚みを持たせることなどを徹底させていた。もっと、もっとやらなければいけない。技術、精度もそうだが、運動量や出し切る部分、上回る部分など、見ている側の心に響くプレーを増やさなければならない。
すでにリーグは後半戦に入っている。そして、残留圏どころか、降格圏にいるライバルたちとも、勝ち点差で10pt以上の差をつけられてしまっている。J2残留に向け、「厳しい」ではなく「絶望的」な状態にいるというのが正しい認識だ。
もちろん、武藤監督も、選手たちも、そうした状況は十分に理解している。
「もう、勝ち点3だけ、必死に勝つために頑張るだけ。生き残るためにはここからの3試合は大事、いずれも勝っていない相手なので勝たなきゃいけない。3試合で、ひとセットと考えがちだが、まずは、1試合ずつやるしかない。」と武藤監督は話す。
次節・藤枝戦を経て、愛媛、鹿児島と3試合を戦うと、J2は2週間の中断期間に入る。今の状況を考えれば、中断期間を上手く使い、リーグ後半戦に向け、立て直し、強化を図る猶予があるとも考えられる。ただ、そんな考えすら今のザスパには悠長に聞こえてしまう厳しい状況だ。
武藤監督も、「中断期間がある事で、いろんな事は考えるが、まず、できることは1試合ずつでしかない。ここからの3試合の結果で、中断期間の2週間をどう使えるかという結果も変わってくる。」と、まずは藤枝戦での必勝に向け、全力を注いでいる。
7月に入れば、新たな選手を登録できるウィンドーも開く。ザスパも、J2残留に向け、補強選手の名前も聞こえ始めている。だが、まずは、チームとして戦い方、スタイルの強化、徹底が無ければそうした選手たちも意味がなくなってしまう。そして、現有戦力である今の選手たちも、力があり、特徴があり、魅力がある選手たちばかりだ。誰よりもこの現状に悔しい思いをしている。自らの力と思いをゴールと勝利という形で表現することで、J2残留への本気度を示して欲しい。我々は、そんな選手たちと共に、どこまでも戦い続けるのだから。