SASAmemo 「新たな景色」を見るために、より厳しさを-ザスパクサツ群馬 チーム解散式レポ

Author:

「チームとしては開幕当初から勝ち点60を目標に掲げていました。」

チーム解散式後の取材の中で、山中惇希はそう教えてくれた。

今シーズンのザスパクサツ群馬は、クラブとして掲げた「勝ち点50、16位以内」の目標をクリアし、史上最高のザスパを掴んだ。そして、シーズン最終盤まで、初めてのプレーオフ争いも演じるなど、これまでとは違うザスパを見せてくれた。

だが、今季最終戦の大分戦翌日に行われたチーム解散式で、選手たちから聞こえてくるのは、喜びや達成感よりも、チーム独自に掲げていた勝ち点目標にあと1勝と迫りながらクリアできなかった悔しさばかりだった。

喜びよりも、悔しさを感じなければいけない。それが「新しい景色」を見るために必要だ。

今シーズンを振り返ってキャプテンの細貝萌は、「目標としていた勝ち点50を超えた事はすごく良かった。これまで超えられなかったものを超えられたのは価値のある事だと思う。」と振り返った。

一方で、さらに上を見ていた中で届かなかった悔しさもある。

細貝は、「勝ち点57までいって、60までいけなかった。チームとしてもっと上に行けると思ったので、今後、クラブが大きくなるために何ができるのかをそれぞれが考えることが大事だ。」と話す。

今シーズンの悔しさをバネに、それぞれが、選手として、チームとして、クラブとして、新たな課題、目標として掲げ、乗り越えていかなければ、さらに上のレベルで勝ち抜くことはできないのだ。

就任2年目でクラブ最高位に導いた大槻毅監督は、「クラブの目標は達成したが、グループで立てた目標には届かなかった。」と振り返った。

それでも、今シーズンは、シーズンを通じて安定した戦いを見せ、勝ち点を積み重ねていった。その要因について、大槻監督は、選手たちの日々の努力とともに、集団が同じ方向を向けるようになった事を上げる。

大槻監督は、「道が見えないと人間は不安になって、どこに進んでいいかわからなくなる。でも、少しずつ、集団で時間を共有することによって、道は見えないかもしれないが、方向は分かってくる。そういう方向が分かる人が増えて、一定の割合を超えると、集団は一気に動き出すと思っているが、今シーズンは、そういう事が起きたと思う。」と説明する。

そうした中で、一定の成果を掴んだが、大槻監督も、「これでよくやった、頑張ったではダメ、もっとやらないといけない。」と満足することはない。

ザスパというクラブは、2005年のJ2参入以降、J2のボトムゾーンが定位置のクラブとして過ごし、2018年、19年にはJ3の戦いも経験するなど、苦しい時間が続いてきた。それだけに、11位とは言え、クラブ最高位を掴んだ今シーズンは、私も含め、多くの方が、達成感、満足感、安堵感が強いと思う。でも、低い目標に満足していては先がない、ザスパというクラブがいつまでも弱小クラブから脱却できないという事を選手、チームは分かっている。

アウェイ・大分での最終戦、現地には、多くのサポーターが駆けつけた。ザスパは、1-2と敗れはしたが、試合後、多くのサポーターは、温かい拍手で選手、チームを迎えてくれた。

その時、サポーターの温かさに触れながら城和隼颯は、思いを新たにした。

「サポーターの皆さんは温かく迎えてくれたけど、あそこはブーイングで迎えられるようなチームにならないといけない。温かく迎えてもらったことは、ありがたいことだけれども、自分たちにもっと厳しくなっていかないとプレーオフを争うチームとは渡り合えない。」と。

金がない、環境が悪い、あれがない、これもダメ、確かに、今のザスパには、足りないものが圧倒的に多い。だが、言い訳を見つければキリはないし、逃げ道が生まれる。今シーズンの戦いで、「新しい景色」が、少しだけ見えたかもしれない。でも、ここで満足すれば、その景色の中心に我々がいることはないだろうし、その先にある、さらに素晴らしい景色を望むことなど到底できないだろう。

もちろん、これまで同様、クラブ、チーム、選手たちとともに、同じ方向を見て、戦い、歩み続ける事に変わりはない。ネガティブなものは、勝利を重ね、皆でつかみ取る、より良いものに、価値を高めていけばいい。

みんなでつかみ取った今シーズンに成績を新たな飛躍のためのベースとして、来シーズンは、自らにさらに厳しく、大いなる目標を掲げ、進まなければならない。プレーオフ、その先へ、今度こそ、「新たな景色」を皆で掴みに行こう。

Follow me!

  • X
PAGE TOP