最終節の京都戦翌日、ザスパクサツ群馬の奥野僚右監督がメディア各社のリモートインタビューに応じた。
J2復帰シーズンとなった今シーズンを振り返るとともに、サポーターへのメッセージを寄せてくれた。
ザスパ創成期の2002年~2003年に選手兼監督を務め、背番号31番はザスパ唯一の永久欠番に。3シーズンぶりのJ2復帰に合わせ、レジェンドの監督就任となり、ザスパオールドファンを中心に、大きな期待をもってシーズンを迎えたが、開幕、そして、再開後は、目指すサッカーが内容でも、結果でもついてこない苦しい時間が続いた。
それでも、日々の成長の大切さ、右肩上がりの成長を求め、選手を育て、チーム作りを進めてきた。シーズンを通じ、チームとして戦い方の大枠は変えていない。今季、大活躍した岡村大八は、最終節・京都戦の後、「開幕してから、やりたいこととやっていることがかみ合っていない事があった。そこを奥野さんが修正、改善した事で結果につながった。やってきたことが、この最終盤に出てきた。」と振り返るように、諦めず続け、成長、理解を深める事で、ピッチ上での表現、そして、結果へとつなげてきたのだ。
そんな奥野監督が大切にしてきたのが「対話」だ。
チーム始動から選手たちに語り掛けてきた。チーム全体にも、個別にも。その理由について、以前、奥野監督は、「選手が思っている事、こちらが思っている事は、結構、違っていることが多い。話をすることでお互いの理解が深まるから。」と教えてくれた。そんな対話の中身は、サッカーに関することにとどまらない。人としての成長につながると思えば、気になる情報、話題、古事など様々だという。また、これまで周囲との対話がそれほど得意ではなかった選手にも、奥野監督自ら声を掛け、恋愛系(!?)の話題も含め、様々な切り口、巧みなトーク力で、選手の心の扉を開かせ、好パフォーマンスにつながる関係を作っていくと言う。いい時でも、上手くいかない時でも、監督と選手が風通しのよい関係であるからこそ、チームがバラバラにならず、一体となって戦えたのだ。
最終節・京都戦でも、そんな監督と選手の信頼感が見られたシーンがあった。83分、川上優樹が負傷退場し、交代回数を使い切ったザスパは、10人での戦いを余儀なくされた。残りの時間をどう戦うか。当初、ベンチと選手たちは異なる考えを抱いていたという。しかし、岩上祐三が、ベンチに駆け寄り、選手側の要望を伝えると、奥野監督は、選手たちの考えを支持した。
岩上は、その時を振り返り、「日頃から、言える雰囲気を作ってくれているので、やりやすくなっている。」と話し、奥野監督は、「ベンチの考えとは違った。だが、中で一体感を持って考え、実戦できたのは素晴らしかった。」と選手たちの考えを尊重し、ピッチにいる選手たちが自ら考え、行動したことを褒めたたえた。これもまた、奥野監督が続けてきた対話を通じ、監督と選手の信頼感が表れた場面であり、結果としても最高のものになった場面だった。
目標にしていた勝ち点50、16位以内という目標には、わずかに届かなかった。それでも、6試合負けなし3連勝でシーズンをまとめ、最終節・京都戦の内容、結果に、今後のザスパへの期待が大きなものになったサポーターは多いだろう。
時間はかかったかもしれないが、それでも1シーズンという期間の中で、奥野監督は、シーズン途中に口にしていた「今年のザスパの完成形」をしっかりと届け、J2復帰イヤーに確かなものを残し、来シーズン、そして、その先へつながるザスパスタイルのベースを気付いてくれたのではないだろうか。来季は、J2定着を目指す大事なシーズンだ。ならばこの先も、奥野監督と共に、右肩上がりの成長を求め進んで行くほかに選択肢はない。