1月11日。草津町を拠点に活動するトップチームの弟分、ザスパ草津チャレンジャーズが始動した。悲願の関東リーグ昇格を果たし、2シーズンを過ごしたものの、昨シーズンは、関東リーグ2部で最下位となり、今季は、再び群馬県リーグからのスタートになる。ただ、もはやチームに俯いている者はいない。新たな気持ちで、チームとして、個人として、上だけを見て突き進むシーズンが始まる。
始動日翌日。前橋市の敷島公園にある補助陸上競技場で、セレクションを兼ねた練習が行われていた。始動日までにチャレンジャーズでプレーすることを決めたのは8名、そして、この日のセレクションには1名が参加して行われた。人数が足りないのではと心配もあるが、直近の試合に向けては選手確保のめどが立っているほか、地域リーグや都道府県リーグは、年度末にかけてチーム体制が整備されていくので、問題はないという。今後も予定しているチーム、そして、他クラブとの合同セレクションなどを通じ、最終的なチーム体制を固めていくことになる。
赤城山に、榛名山と、周囲の山々も際立つほどの青空が広がるが、強く、冷たい北風が吹きつける中、チームの指揮を執る木村直樹監督の指示、そして、選手たちの声も響き渡ったトレーニングは2時間以上に及んだ。草津町のグラウンドは雪に覆われ、芝の上でボールを蹴ることができるのは貴重な時間なのだ。
昨シーズンは、関東2部リーグで最下位となり、今季は、群馬県リーグからのスタートになる。そんなシーズンについて木村監督は、「関東リーグから降格してしまったが、いつまでも落ち込んでいられない。また再始動というか、イチからチームを作っていくという思い。本気でやってもらえる選手だけ残ってもらえた。よし、やってやろうという気持ちでスタートできた。」と思いを語った。
始動日のスタートミーティングでは、選手たちに、「もう一回、関東リーグ復帰、そして、成長できるよう、何事にもチャレンジしようと言った。」という。キャプテンは、清水大士が務め、チームとしての目標は、「KSL(関東リーグ)復帰」と明確だ。
一方で、昨シーズンの課題にも向き合う必要がある。今や関東リーグでも、元Jリーガーは当たり前で、レベルもグンと上がったが、そこだけでなく、様々な事を「受け入れる」という事に苦慮した1年だっという。
木村監督は、「いろんなことがあって、それを受け入れなければいけない状況なんだと後から気付いた。選手も途中でやめてしまったり、コロナもあった。コロナでは、隔離期間が終わって、1週間後にリーグ戦再開というスケジュールに対応しなければならないなど、本来であれば『冗談じゃないよ!』というところもあったが、現実として受け入れなければいけない状況だった。(降格は)コロナのせいでも、選手のせいでもなく、成長しなければいけなかったというのが悔やまれるところだ。何事にも向き合って、ちゃんと前に進んでいく勉強の1年だった。」と振り返った。
自らの力で変えられること、そして、変えられないこと。その変えられない部分をどう受け入れ、対応するか。「降格」という大きな代償を払う事にはなったが、チームの学びとして生かしていきたい。
チームとしての関東リーグ復帰、そして、それ以上にこのチームに求められていると言ってもいいのが、選手のトップチーム昇格だ。
ザスパ発足の精神をそのままに、アマチュア選手たちが、草津温泉の旅館、ホテル、商店などで働きながら、トップ昇格、プロ契約、Jリーガーとして夢を勝ち取ることができるチャンスがあるのがザスパ草津チャレンジャーズの最大の魅力だが、チャレンジャーズからのトップ昇格は、2016年の鵜飼亮多が最後だ。
そんな難題に木村監督は、「単に上を目指すだけでなく、どういうチームが、どういう選手が上に行けるのかを突き詰めてやっていきたい」と考え、トップに対しても、「今までは、待っているだけだったので、こちらからもアクションしないといけないと思う。時間の許す限り顔を出して、コミュニケーションを取れたらなと思っている。」と話す。
事実、これまでもトップチームの監督や強化部の温度感で、チャレンジャーズとの関係性はシーズン事に変わっていた。奥野僚右元監督の様に、全てを知り尽くしている監督であれば別だが、ほとんどの監督は、チャレンジャーズへの理解はほぼ無いに等しいし、それは仕方がないことだ。木村監督と、新指揮官である大槻毅監督は同い年になるが面識はない。
そうした状況でスタートする今シーズン、木村監督も、「顔も覚えてもらわないと、選手も紹介できない。できるだけ(大槻監督やトップにも)顔を見せ、少しでも話をして、トップのサッカーを見て、盗んで、いつでもチャレンジャーズの選手が行けるような準備をしたい。それが最低条件だと思う。」と積極的に売り込む姿勢を見せた。
トップチームの始動日。練習場には木村監督の姿もあり、大槻監督はじめ、言葉を交わすシーンがあった。練習中は、トップチームのトレーニングメニューを細かくメモに取り、この日のチャレンジャーズの練習にも積極的に取り入れていた。
その辺りについて、木村監督は、「まったく違うサッカーでトップに上がるのは難しい。選手がトップに呼ばれたときにも、やりやすい環境を作りたい。そういうのも含め、チャレンジャーズの選手にも、いいものを提供したい。」と述べた。チャレンジャーズからトップに上がるのは簡単な事ではない。それでもザスパからJリーガーを目指すという夢を持った若者たちのために自らが積極的に動き、その可能性を広げたいという思いだ。もちろん、限られた状況の中で戦わなければいけないトップチームにおいても、キラリと光る特徴を持った選手が現れれば大きな力になるのは言うまでもない。ザスパサポーターの皆が待ちわびる「草津産Jリーガー」の誕生へ、木村監督も奮闘する覚悟だ。
群馬県リーグは、4月開幕予定だが、公式戦は、今月末から始まっていく。トップと同じく、チャレンジャーズの応援もまだまだ制限された中になるが、木村監督は、「コロナ禍でなかなか、サポーターの皆さんにも会えないが、会える日を楽しみに、また一生懸命頑張るので、トップチーム同様、チャレンジャーズの応援も、よろしくお願いします。」とメッセージを送る。
2022シーズンが動き出したザスパ草津チャレンジャーズ。難しい社会情勢の中、彼らのチャレンジはより困難を極める。だが、それを乗り越えて、夢を勝ち取ることで、その価値は格段に上がるのも確かだ。サポーターの皆さんにも、ザスパ草津チャレンジャーズとともに今シーズンも駆け抜け、一緒に夢を掴んでもらいたい。