【THESPA】勇利也の思い

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「いっこ唄いたい唄があるんですけどいいですか?」

10試合ぶりの勝利を挙げた奈良戦の後、ゴール裏のザスパサポーターに感謝の気持ちを伝えた高橋勇利也は、そう切り出すと、トラメガを口に当て、唄い始めた。

「ネットに突き刺せ、熱き魂を!!」

すぐに意味を感じ取ったサポーターが、高橋とともに大合唱を始めた。

「青木翔大、オレ!青木翔大、オレ!ネットに突き刺せ、熱き魂を!!」
「青木翔大、オレ!青木翔大、オレ!ネットに突き刺せ、熱き魂を!!」

青木翔大は、2試合前の31節八戸戦で、相手選手からのチャージを受け負傷退場、その後の検査で左足関節靭帯損傷及び脛骨遠位端骨折と診断された。今季の復帰は絶望的で、チームトップスコアラーであるだけでなく、気持ちを全面に出したプレースタイル、そして、いつでも、どこでも、どんな時でも、仲間に声を掛け、勇気付ける彼を欠くのが、残留争いのザスパにおいてどれだけ苦しい事がというのは説明する必要もないだろう。

そんな青木のコールを高橋はどうして唄おうと思ったのか、後日、聞いてみた。

「試合前から勝って、ああいう場に立ったら唄うと決めていた。」そう高橋は教えてくれた。

この日は、試合前の集合写真の際にも、青木のユニフォームを用意するなど、チームとしても青木とともにという思いを強くしていたが、高橋も大事なチームメイトへの思いを胸に秘め、挑んでくれていたのだ。

「八戸戦でああいったことがあった。常に良い準備をしている人でもケガをしてしまう、サポーターも思う部分はあったと思うし、選手としても悔しい思いだった。」

高橋にとって青木は、ポジション、年齢、キャリアなど異なる事は多いが、ザスパへの思い、ともに副キャプテンとしてチームをさらに良くしようという熱さでは共通している。ケガをした青木はピッチに立てないが、思いは共にすることができ、一緒に戦い続けることはできる。

「ポジションもあり、自分も練習で、翔大くんとはぶつかり合ったし、ケンカするくらい要求し合いう事もあった。だけど、上手く言っていない時でもずっと声を掛けてくれた、上手く言っていない時に、チームがバラバラにならなかったのは翔大くんや達くん(小柳達司)たちが常に声を掛けてくれたお陰だと思っている。だから、翔大くんも、チームが苦しい時間にピッチ立てないのは一番悔しいと思う。だから、翔大くんのために一つになりたかった。なので、唄いました。」

高橋も、ザスパ在籍5シーズン目を迎え、在籍最長選手になった。ここまでポテンシャルの高さを見せながらも、自身もケガで苦しんできた。昨シーズンは、キャリアハイの23試合に出場したが、チームはJ3降格。そして、今シーズンは、副キャプテンとしてチームをまとめる役割も担っているが、なかなか、ザスパの勝利を増やせず苦しんできている。

試合に出たくても出られない選手の思いもわかる、そして、チームを勝利に導きたくても思うようにいかないもどかしさも痛感している。ザスパへの愛着含め、青木とは似通る所が多い。

青木のためにも、サポーターのためにも、そして、自らの価値を証明するためにも、残り5試合、勝利を重ね続けなければならない。そのために、高橋は「懸ける思いの強さ」を挙げる。

「勝っているチームは、プレーはもちろんだが、迫力の部分で懸ける気持ちが伝わってくる。奈良戦では、その思いが自分たちの方が強く、ワンプレー、ワンプレーに出た。次節の相手、金沢も、強い気持ちで来ると思うがそれ以上にやらないといけない。自分たちも残留が掛かるし、相手もPOが掛かる。でも、自分たちの方が懸ける思いは強い。だから、プレーと思いで上回らないといけない。」

奈良戦の勝利で、自分たちの本来の姿をようやく取り戻したザスパ。時間がかかりすぎてしまったことは残念だが、これを続け、結果に繋げ続けられるかどうかがこれからにかかっている。金沢戦は、その大事な一歩目だ。

ピッチにいても、いなくても、試合会場にいても、いなくても、全く関係ない。大切なのは、選手、チーム、クラブ、サポーター、ザスパを思うみんなの気持ちをひとつに、ゴールと勝利に懸ける思いをどこよりも強く出して、残り5試合を突き進んでいけるかどうかだ。

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