北九州に敗れ、4連敗となったザスパは、次節、アウェイ4連戦の締めくくりとなる鳥取戦に向け、今週の練習を完全非公開で臨む事にした。沖田優監督が就任してからはもちろん、新型コロナウイルスによる制限があった時を除けば、それ以前も含めて、メディア関係も含め、完全シャットアウトとなるのは初めてではないだろうか。
鳥取戦は、今年目指してきた自分たちのスタイルで勝たなければならない。もし、負けるようなことがあれば、今シーズン、新たに積み上げてきたものが崩れ去ってしまう、そんな事も頭を過る。
今シーズンは、2019年以来のJ3での戦いだった。あの時以上に、J3はハイレベルなリーグとなり、1年でJ2に戻れるほど簡単ではないというのは、シーズン前からわかっていた。だから、「J3優勝、そして、1年でのJ2復帰」というザスパが掲げた目標は、決して簡単なものではない事も多くのサポーターはわかっていたはずだ。
その中で戻るためには、2つの方法があり、ひとつは、資金力を武器に、スーパーな選手たちを揃え、力で押し切る事。だが、ザスパにはそれができない。もうひとつは、しっかりとしたクラブ、チームのスタイルを確立し、選手の良さ、特徴も活かしながら、チーム力で勝利を重ねていく方法だ。ザスパは、そちらを選び、今シーズンの戦いに挑んでいった。
過去を見ても1年でJ2に復帰したチームは少なく、多くのクラブが、新たな指揮官、選手、スタイルを構築し、確立した上で、タフなJ3を勝ち抜き、J2へ復帰、昇格していっている。
ザスパも、「超・攻撃的サッカー」を掲げ、監督、選手だけでなく、GM、強化部長も含め、全てが一新され、真っ新な状態でスタートを切っていったシーズンだ。
選手の入れ替えも例年にも増して多かったが、それでも獲得の基準は明確で、J3で結果を出し、25歳くらいまでの年齢で、今後の伸びしろ、将来性がある選手、そして、超・攻撃的サッカーを表現するために、特に足元の技術に優れた選手たちが集まった。
新チーム始動から、一貫して攻撃に重きを置いたチーム作りで、身体も、頭も使う、ハードなサッカーだったが、選手たちはやりがいを感じていたのが印象的だった。
近年、守備的な戦いを強いられてきたザスパにおいて、「攻撃的」というのは甘美な響きだが、過去、攻撃的姿勢を掲げてきたクラブがすべてうまくいったかと言えば、そうではなく、理想と現実の間で苦悩してきた方が多いようにも感じる。攻撃的サッカーは、誰もが願う理想のスタイルだが、それを形にし、結果につなげることがいかに難しいかという事は、歴史が示している。
今季のザスパのスタイルで言えば、多少のシステム変更はあったが、GKも含め、後方からパスをつなぎ、奪いに来る相手をいなし、中盤、サイドのスペースを使い、一気に相手ゴールへ迫っていくサッカーだ。
ボール支配率、パス本数、パス成功率からみても、そうしたスタイルは表現しているが、相手ゴール前でのシュート本数、そして、決定力を含めた、ゴールの数が伸びず、勝利という結果に繋がってきていない。
一方、守備では、ビルドアップでのミスよりも、そこから先で奪われた後の切り替えの悪さ、守備のスタートポジションの悪さ、ズレ、1対1、ボールサイドでの弱さ、セットプレーを含めたサイドからゴール前に入るボールへの守備対応のまずさから、相手の少ないチャンス、シュート機会がことごとく失点に繋がってしまい、攻撃への勢いをそがれるとともに、試合展開を難しくしている。
早い段階から、そうした状況が続いていたし、沖田監督も「結果を出すために、成長のスピードを加速させたい」と話していたように、課題は明確だったが、あと一歩、もうちょっとの所が乗り越えられず、結局、ここまで来てしまった。
掲げた目標、スタイルに対して、現状の結果には、サポーター含め、誰ひとり満足しておらず、不満しかないだろう。
サポーターの中には、「攻撃的な姿勢は良いとしても、もっと守備の練習をしろ!」という声もあるだろう。それについて言えば、守備練習をしていないわけではないが、攻撃の練習により多くの時間を割いているのは事実だ。
多少の失点は覚悟の上、その中で、攻撃力をもって、相手を動かし、疲弊させ、ゲームを支配し、相手を押し込み、ゴールを奪い、打ち合いになっても、打ち勝つことで、相手を抑え込むという考えだ。だが、その攻撃も、前述の通り、ゴールが奪い切れず、抑え込むことは出来ていない。
さすがに、夏の3週間の中断期間には、守備対応にも時間を割き、その甲斐もあってか、再開ゲームのFC大阪戦では、ゴール前での守備連携、対応に成長を感じたし、ピンチもないわけではないかったが、結果、クリーンシートで相手を抑え込む事にも成功した。
だが、その後、栃木SC、讃岐、琉球、北九州と、いずれも1点差負け。相手を上回るゴールが奪えず、今シーズンの典型的な悪いパターンでの失点の仕方を繰り返した。結果、4連敗を喫し、負け試合が続く中で、ピッチ上の選手たちから自信が失われている様に感じ、それがさらに悪い方向へと向かっている様に感じる。
スタイルが確立されたザスパに対し、相手は高い位置から仕掛けてくる。見ている方はヒヤヒヤするが、本来であれば、それはザスパが願っている事で、「どんどん来い、もっと奪いに来い、それを交わして、お前たちの背後を突いてやる、チャンスを与えてくれてありがとう!」そのくらいの気持ちであるはずだが、そうした雰囲気がうかがえず、挑む姿勢、チャレンジする姿勢が伝わらず、相手の脅威とならないサッカーになってしまっている。
失われた自信、チャレンジしようとする強い気持ちが戻らない限り、どんな相手と対戦しても、我々が望むような結果は得られないように感じる。それくらい行き詰っている印象だ。
北九州戦の前、選手たちのみでの選手ミーティングも行われた。どのような事を話し合ったのか、内容、詳細は不明だが、選手たちも、様々な方法でこの状況を打破しようとしているが、北九州戦では結果につながらなかった。
選手たちの自信を回復し、如何に、チームの士気を高められるか、ゴール、勝利という結果が特効薬であるのは言うまでもないが、そこに繋げるための術が求められている。
また、「J3優勝、J2復帰」という事よりも、「J3残留争い」というネガティブな要素も、状況をより一層難しくしている様に感じる。
選手たちは、「数字の可能性がある限り諦めない」と上を見たコメントをしてくれるが、現実は、足元に迫っている残留争いから抜け出さなければならない。
昨シーズンから、J3も、下部カテゴリーのJFL(日本フットボールリーグ)との入れ替え戦が本格的にスタートした。J3最下位は自動降格、J3の19位は入れ替え戦にまわる恐れがある。恐れがあるというのは、JFLクラブのクラブライセンスなど、条件を満たせるかどうかによって、その状況が変わるからだが、昨シーズンは、盛岡、YS横浜と2クラブが、J3残留を果たせず、JFLに降格している。ザスパにだって、その恐れがないわけではない。
現状、最下位・沼津とは勝ち点差9pt、そして、19位・讃岐とは2pt差でしかない。
降格の不安がなければ、明日への糧と考え、理想を追い求めるのも一つだが、降格の不安がある以上、最低限の結果を出しながら、理想を追い求めなければ、厳しい現実が待っているだろう。
昇格には勝ち点3が必要だが、残留には勝ち点1以上が必要だ。開幕から27試合を過ごしてきた、残りは11試合しかない。一定程度の可能性は感じつつも、本当にこのスタイルでいいのか、大きな疑問を抱いている人も多いだろう。
自信を掴み、ゴール、勝利という結果を手にするためには、何か大きな変化が必要なのかもしれない。
決断のタイミングを逃せば、取り返しがつかなくなることもわかっている。それでも、私は、やり抜いてもらいたい、結果では、何度も裏切られてきたが、残り11試合で、チーム、クラブが目指す、「超・攻撃的サッカー」を体現して欲しいと強く願っている。
戦力的な部分で言えば、もっと結果を出してもおかしくない戦力が揃っている。そして、ケガなどの関係で別調整が続いていた真木晃平や夏の移籍組である中島大嘉、8月に加入した 山口一真、さらに期待のルーキー・秋元琉星らもコンディションが上がってきている。彼らのポテンシャル、爆発力があれば、閉塞したこの状況を打破してくれるという期待がある。
また、沖田監督をはじめとする、コーチ、スタッフ陣には、選手たちを守り、労わる優しさだけでなく、彼らの戦う力をより一層、引き出してもらえるよう鼓舞してもらいたいし、チームのために戦え、全体に自信と勇気をもたらせる選手を選んで戦ってもらいたいと思う。
そして、細貝萌GM、佐藤正美強化部長には、これまで乗り越えてきた幾多の困難な経験をもとに、チームの士気を高めてもらい、彼らが十二分に力を発揮できる状況を作って欲しい。なにより、どんな結果でも、いつでも、どこでも、どこからでも、エールを送り続ける県民、ファン、サポーターに、残り11試合を戦い抜く強い思いを発信してもらいたい。
別に、目標の下方修正をして欲しいわけではない、ザスパ再生のために掲げたこのスタイルで、戦い抜き、残り11試合で、必ずやゴールと勝利、そして、これからの希望を届ける思いを伝えてくれたらと思う。多くのサポーターは辛抱強く戦ってくれている。そんなみんなのためにも、メッセージが必要なタイミングではないだろうか。
ただ、鳥取戦に向けた練習が完全非公開となり、こちらからも、チームからも、直接、メッセージを伝えることはできない。あとは、鳥取戦で、どんなサッカーを見せるか、そして、自分たちのスタイルでゴール、勝利を挙げられるか。それしかない。
反転攻勢のきっかけとするべく、勝負を懸けたはずのアウェイ4連戦。その最終戦となる鳥取戦は、今後のザスパの在り方、存亡をかけたゲームになる。
ザスパを愛しているモノならば、願うは、鳥取戦での複数得点での勝利のみのはずだ。選手、チームに、勇気とエールを。次こそは、鳥取戦こそは、選手、チームにも応援してくれるみんなの思いに結果で応えてもらいたい。土曜の夜は、皆で勝利を喜び合いたい。







