【THESPA】チームとしての成長だけでなく、個人の力と思いを示し、転換点となるダービーへ

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5月のザスパを振り返ると、会長杯、天皇杯を含め、6試合負けなし、3勝3分けで過ごした。ただ、リーグ戦4試合に限れば、1勝3分けに終わった。さらに、引き分けた3チームは、いずれもザスパより下位チームで、しかも、ホームゲームだったことを考えると、達成感などはなく、悔しさが募るばかりだ。

新チーム始動、シーズン開幕から積み上げてきた事に成長、手ごたえはある。だが、結果に届かない現状に、選手たちももどかしさを感じている。

キャプテンの米原秀亮も、「天皇杯含め、いろいろな選手が出て、監督がやりたいサッカーをトライし、多く出せる試合が増えてきたと思うが、Jリーグの試合を見ると勝てていないのが現状だ。」と、話す。

そして、現状打破のために、「もうひとつ、個人の精度を上げる、こだわる事で変わってくると思う。押し込める時間は多いと思うので、その中でどう崩すか。ひとり、ひとりが、この状況でこだわっていきたい。」と考えている。

沖田優監督も、チームとしてしっかり積み上げられている事を感じているが、もっとやらなければいけないという思いを強くしている。

「4月の段階よりは、攻守ともに、ひとつ階段を上ったと思う。ただ、相手陣内でプレーしている時間や状況を考えれば、もっとペナルティーエリアに入れるし、シュート数を増やせる。攻撃は、試合によって波ができやすいものだが、沼津戦は、特に前半、シュート数を増やせなかったのは、悔しさが残った。」

そして、米原同様、質を上げる事はもちろん、そのために、より良い状態を作り出すことが大切だと考えている。

「もっといい状態でクロスを上げたい、シュートを打ちたい。そのために、その状況を作り出す前のプレーでミスを減らしたい。また、ペナルティーエリアに到達している時に限って、人数が少ない。相手陣内にいるだけじゃ無く、良いクロス、良いシュートで終わろうというのを選手たちとも共有している。」

「ペナルティーエリアに入った時に、出し手と受け手の関係が合っていないというのが結構ある。構図は良いが、意識共有ができれば、もっとチャンスを作れたし、ゴールになったというのが多かった。」

沼津戦に限らず、シーズン開幕から試合を重ねるごとに、ボール支配は高まり、主体的にボールを動かし、相手陣内、ゴールに攻め入るシーン、時間帯は確実に増えている。

『あと一歩、もうちょっと。』

ちょっとお馴染みのフレーズになってしまった感もあるが、肌感覚でも、データで見ても、今は間違いなくそんな状態だ。だが、J3優勝、1年でのJ2復帰を目指すのであれば、そろそろその状況を乗り越えなければ間に合わなくなってしまう。

チームとしての戦いは継続して欲しい、積み上げながら成長して欲しい、その思いは変わらないが、J2に行こうというクラブ、選手なら、もっと「個」としての違いを見せて欲しいという思いがある。この閉塞感を、チーム力とともに、個人の力で打ち破って欲しいという事だ。

沼津戦で後半途中出場し、今季リーグ戦初出場となった菊地健太は、「(5月の試合は)チームとしても勝てた試合だと思う。もったいないし、逆に引き分けてしまったという思いだ。カウンターで下げてしまう事がある、行き切る時は、行き切らないといけない。質もそうだが、もっと大胆にやっていいと思う。」と勝てなかった悔しさ、そして、現状打破への思いを口にする。

今シーズン、菊地の主戦場である左サイドバックは、攻撃時、中央に絞って、ボランチ的な役割を求められている。もともとは、積極的なサイドアタックで、ゴール前にクロスボールを送り続けるプレーが菊地の特徴だ。だから、今シーズンのサッカーは、彼にとってもチャレンジばかりだが、ひた向きに取り組みを続けている。そして、カップ戦でアピールに成功し、沼津戦でのメンバー入り、試合出場を掴んだ。

試合出場を掴むには、チームとしての役割を果たさなければいけない。だが、菊地は、それだけではなく、もっと自分の良さを出したいと思っている。

「自分は、走って、クロスを上げるタイプの選手。FWには、髙澤選手はじめ強い選手が多いからどんどんクロスを上げたい。」

「試合に出たら、前に出る事、走る事をプラスしたい。チームとしてやるべき事と、自分の良さをどう出すかを模索している。」

相手もザスパのサッカーを対策してくる。その中で、上回るにはチームサッカーに、選手個々の良さ、特徴がもっと出なければいけないと思う。菊地はそのバランスを模索中ではあるが、彼にしか出せない良さをもっと出して欲しい。その違いが相手に対しても脅威になり、ザスパの勝利への力になってくれるだろう。

そんな菊地同様、沼津戦で今季初出場となった小柳達司も、個人としての強い思いがある。

沼津戦では、ゲーム途中から出場し、相手ボールホルダーに厳しいコンタクトを繰り返し、チャンスを作らせない守備で貢献し、さすがという所を見せた。だが、小柳にとって、このJ3の舞台では当たり前のことだ。

「J2にもう一度上がりたいと思ってザスパに来た。自分の中ではJ3のFWにやられたら、J2に上がっても、また降格か、契約満了かだと思う。もっと強くて、速くて、上手い選手とやってきた。だから、J3で負けたらサッカー選手として終わりだと思う。他の若手にも、もう少しスタンダードを上げるような基準を示せたらなと思う。」

今季のザスパは、クラブと沖田監督が掲げる「超・攻撃的サッカー」の元、J1基準を指標にチーム作りを始めたはずだ。驕るつもりはないが、J3で相手を圧倒できなければ、J2にも戻れないし、定着も、そのから上も望むことはできないだろう。

もちろん、ゴール、勝利という結果が欲しいが、付け焼刃に結果だけを積み重ねて欲しいとは思わない。

今シーズンは、ザスパの新たなスタイルを構築する「元年」でもある。「超・攻撃的サッカー」というスタイルを追い求めながら、チーム、個人の更なる成長を追求し、加速しなければならない。そして、個々人としても、局面で、自らの良さ特徴を示さなければいけない、対峙する目の前の相手に負けてはいけない、上回らなければいけない。チームとともに、個人としても見せてもらいたい。それができれば、このモヤモヤした空気も晴れるし、必然としてゴール、勝利を重ね続けることができるだろう。

次節は、長きに渡り、ライバルでもある栃木SCとの北関東ダービーだ。

米原は、「ダービー勝つことで、チームとしても変われるチャンスだと思う。この1試合をきっかけにしていきたい。」と話す。

チームとして積み上げてきた確かな成長を結果に、そして、個人としての思いを試合にぶつけ、ザスパのゴールと勝利につなげる原動力にして欲しい。現状の順位関係なく、どちらがJ2に帰るにふさわしいかを示す意地、プライドも見せて欲しい。ザスパに関わる全てのものの力を集結して、チームとしても、個人としても、この試合に出し切ることで、ダービーでのゴールと勝利、そして、ここから先、J2復帰へつなげるための転換点となるゲームにして欲しい。

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