昨シーズンをもって群馬グリーンウイングスを退団した吉岡みなみ選手が、ヨーロッパ・ドイツのプロリーグに挑戦することが発表された。移籍先は、ドイツ・ブンデスリーガ女子1部の「VfBズール」というチームだ。
VfBズールは、昨シーズン、リーグ5位(10チーム中)の成績を収めたチームだ。また、KUROBEアクアフェアリーズなどでも活躍していたリベロの馬場ゆりか選手も、2シーズン在籍していたチームで、日本人選手とも縁のあるチームだ。
吉岡選手は、グリーンウイングスにおいて、長くリベロとして活躍し、キャプテンも経験するなどチームに対する貢献度も高い選手だ。グリーンウイングスが、SVリーグにチャレンジするこのタイミングで、吉岡選手はなぜドイツでのチャレンジを選んだのか?ドイツに渡る前に、その思いを教えてもらった。
-ドイツへの移籍が決まり、どんな心境か?
まだ実際に、ドイツに行ったわけではないので実感はないが、念願だったヨーロッパで、やっとプレーできるというワクワクな気持ちだ。最近は、ちょっとずつ不安も大きくなっていたりもするが、ドイツでもしっかりプレーできるよう、ちゃんと準備したいと思う。
-海外に挑戦しようと思った理由は?
グリーンウイングスに来る前も、フィリピンでプレーしていたが、グリーンウイングスに来てからは、海外でプレーしたいという思いはなかった。ただ、チームが、外国人選手を獲得するようになり、一緒にプレーして、海外移籍の思いが芽生えてきた。外国人選手と一緒にプレーしていて、プロ選手としての考え方や気付き方に日本人との違いを感じ、もっと知りたいと思うようになった。そして、日本人の良さでもある、小さくても、技術だったり、粘り強さだったり、拾ってという所はとても大切な事だが、高さのあるバレーにも魅力を感じるようになったし、それは、日本では感じられないのではと思うようになった。どこまで高さのあるバレーボールに、自分の守備が通用するのか、そのレベルでやってみたいというのをここ数年感じていた。
-フィリピンでプレーしていた「海外」とは違う思いか?
フィリピンに移籍した時は、どこでもいいからバレーボールがしたいという思いだった。その一つの手段として、海外があり、フィリピンのチームから声をかけてもらえ、プレーする事ができた。フィリピンの時も、フィリピンの良さがあったけれど、これから行く所はレベルが全然違い、高さも違う、経験値という意味でも全然違うだろう。一方で、群馬に来てからアスリートとしての取り組み方を素晴らしいスタッフから学ぶことができた。その経験、財産を得た上で、どれぐらい通用するのかというのが楽しみだ。
-カルラ・クラリッチ選手、ハンタヴァ・エヴァンゲリア選手から影響を受けたことは?
グリーンウイングスはまじめなチームで、私も含めて、個人で上手くいかないと、メンタルが落ちたり、マイナスな事に引っ張られてしまうが多いように感じる。でも、カルラも、エヴァも常に前向きだった。彼女たちはいつも、「やれる、やれる!行こうよ、行こうよ!」というメンタルだったし、私たちも、そう言ったものに支えられていて、日本人とは違うんだなと思った。
-エヴァがいた時は、常にそばにいたイメージがある
ふたりへの思いとしては、カルラが1年プレーして、シーズンが終わった時に海外挑戦したいと思ったが、終わった時の反省があって、自分がフィリピンにいた時、文化や言葉も違って、ひとり寂しく、しんどさも感じた経験があったのに、カルラをサポートしきれず、申し訳ないなと思った。だから、エヴァが来た時には積極的にサポートしたいと思ったし、海外挑戦の思いも強かったので積極的に関わって、いろいろ教えてもらった。
-チームがSVリーグ参戦というタイミングに迷いはなかったか?
もちろん、迷いはあったし、斎藤真由美監督はじめ、チームからも「残って欲しい、一緒にやろう!」と言ってもらえた。ただ、2年くらい海外挑戦を思い続けて、念願が叶った、今回は、海外に行くという選択の方が大きかった。SVリーグも最高峰リーグではあるが、自分の夢だったり、年齢(現在31歳)を考えた時に、このチャンスを逃したら、次はいつ来るかわからないと思った。すごく悩んだが、海外挑戦することを選択した。
-VfBズールに決まった経緯は?
移籍先を探すにあたり、自分のディグやレセプション、ハイセットといったプレーを5分ぐらいにまとめた映像を用意し、エージェントを通じて探してもらった。そうして決まったのがVfBズールだった。
-ドイツのバレーのイメージは?
ヨーロッパのイメージとしては、イタリアの一番レベルが高く、トルコやポーランド、フランス、ドイツもレベルが高いというイメージ。ただ、ヨーロッパは、シーズン中の移籍も当たり前なので、その環境で頑張れば、他の国やチームからもオファーがあるかもしれない。とにかく、今シーズン、頑張ることが大事だと思っている。年齢的に、ここから何年もとは思っていないが、それでも、上にチャレンジしたい。
-グリーンウイングスの6年はどんな時間だったか?
群馬で得たものは色々あって、人間的な中身もあるが、アスリートとしての知識をたくさん得ることができたのが大きかった。フィリピンにいた時は、食事やトレーニングの事など何も知らないまま、学生の延長で行ったが、群馬の6年で、優秀な指導者、スタッフに出会え、本を借りたり、たくさんの経験を教えてもらい、自分の弱点を強化する術などを知ることができた。人間的な部分でも、振り返れば、加入した頃は、自分が幼く、自分の考えが一番だと思っていたが、それぞれの価値観がある事を学んだし、私は、自己肯定感が低いが、斎藤監督がいらっしゃってから、ポジティブに考える事、自己肯定感を上げる事の大切さを教えてくれた。そのおかげで、悩むことはあっても、しっかり受け止めて、前に進めるようになったと思う。グリーンウイングスに来て、素晴らしいスタッフ、選手たちに出会えてよかったなと思えた6年間だった。
-グリーンウイングスにエールを
SVリーグは私も経験したことがない。そこに挑もうとする選手たちも不安が大きいと思う。それでもSVリーグで戦う事は決まっているし、新たな挑戦ができることは素晴らしい事だと思う。まずは、今のレベルをしっかり出せるようにして欲しい。そして、一番はカバー力が大事になってくると思う。上手くいかなくて、悩むこともあると思うが、まずは、チームがポジティブであり、誰かが悩んでいたら一人にせず、みんなでカバーしながら、スタッフと一緒に頑張ってもらいたいと思う。そうすれば、その先にはいい結果が待っていると思う。グリーンウイングスにも頑張って欲しいし、舞台は異なるけど、私も一緒に頑張ろうという思いだ。
SVリーグに挑むグリーンウイングスにとって吉岡みなみ選手がチームを離れることは、プレーだけでなく、チームをまとめ、支えるという意味でも大きな痛手だ。だが、一方で、グリーンウイングスを通じて、さらに成長した選手が、海外という大きなフィールドにチャレンジするというのも、素晴らしく、仲間としても誇らしい事だ。グリーンウイングスも、吉岡選手にとっても、決して簡単ではないチャレンジが始まろうとしている。プレーする場所は違えど、これからも大切な仲間であることに変わりはない。互いにいい報告ができる様、これからも切磋琢磨し、応援し合いたい。今は、オンラインで吉岡選手の様子を知ることもできるありがたい時代だ。日本から、群馬から、吉岡みなみ選手のチャレンジを応援しよう!
ドイツ ブンデスリーガHP https://www.volleyball-bundesliga.de/
VfBズールHP https://volleyball-suhl.de/
VfBズールInstagramアカウント @vfbsuhl_diewoelfe1991
吉岡みなみ選手Instagramアカウント @__minaaaaaaa.s