女子バレーボールのV・サマーリーグ東部大会は、7日に最終日を迎え、群馬グリーンウイングスは、優勝決定戦で、PFUブルーキャッツにセットカウント0-2(11-25、14-25)で敗れたものの、準優勝に輝いた。また、大会の敢闘賞には、ミドルブロッカーの目黒愛梨選手が選ばれている。
予選グループ戦では、内容あるバレーで1位通過を果たし、サマーリーグ過去最高順位で終えるなど、好成績を収めたことで、秋から始まる国内最高峰リーグ・SVリーグ参入に向け弾みになりそうだ。
敢闘賞を受賞した目黒は、「SVリーグ開幕までに、ユニフォームを着てゲームができるサマーリーグは貴重な場で、これまでやってきたことを出したいと思っていた。だが、一番大事なのはリーグ開幕戦で、そこで、どう勝っていくかにフォーカスしている。開幕戦はもちろん意識している。」と結果に浮かれず、これから始まる新たなステージでの戦い、そして、その最初のゲーム(=開幕戦)を鋭く見つめている。
3日間の大会期間中、私が、取材に訪れたのは2日目だけだったが、埼玉上尾メディックス、リガーレ仙台との2試合に勝利し、予選グループ戦を1位通過したという結果以上に、内容面で、これまで以上の成長を感じさせてくれた。
昨シーズンのグリーンウイングスを振り返ると、オフェンス面こそ、V2女子の中で、一定の強さを見せていたが、元来の持ち味であったディフェンス面での強さが影を潜め、サーブで攻められるとレセプションが乱れ、相手のスパイクに対してもブロックが機能せず、また、フロアディフェンスでも拾い切れず、粘り強さを感じる事ができない弱さがゲームを難しくしてしまっていた。
ところが、この日の2試合は、いずれもディフェンス面で光るものを見せてくれた。レセプションでも、コート内で声をかけ、フォローし合い、厳しいサーブも、懸命にセッターに返し、ブロックでは、仲間と連携しながら、しっかりとスパイクコースを封じるとともに、ブロックアウトを許さず、相手コートにボールを落とすスキルを繰り返し表現した。また、フロアディフェンスでも、ボールへの反応、食らいつく姿勢はもちろん、そこから仲間につなげ、チャンス、得点へと繋げる、粘り強さを見せるなど、頼もしさが印象的だった。
選手個々の動きについても、見ている側に伝わるキビキビとした動きで、キレ、強さがあり、明らかにこれまでと違う姿だった。
藤井寧々は、「シーズンが始まってから、フィジカルを強化してきた。また、動きやブロックなど、細かくやってきた。これまでの試合ではできなかったが、やってきたことを出そうと思ってやり、自分たちらしくできた。」と手ごたえを教えてくれた。
また、副キャプテンの白岩蘭奈は、「新チームになって、止まってからの動き出しや、フロアディフェンスのボールコントロールといったものをチーム全体として意識している。トレーニングでも、アジリティ(機敏性)の強化をしているので、球際の強さは自分たちでも感じている。」と話すなど、自信を持っている。
さらにコート内外で、よく声も飛んでいた。藤井も、「コミュニケーションの量も増え、勝ちにつながったのでとてもいいゲームだった。」と振り返った。もちろん、これまでも、声は良く出ていたと思うが、ただ声を出して、雰囲気作りをするのではなく、意味のある会話を伴った声がコート内外で飛び交っていたのがこれまでとの違いだ。白岩は、「ただ声を出すのではなく、会話をすることが大事。選手同士で、コミュニケーションをして、確認をすることが劣勢の中でも今日はできた。」と振り返る。そして、目黒も、「自分たちが劣勢や上手くいかない時は、意図のないプレーが重なる、それがどんどん失点につながる。ぼんやりと何とかしなくちゃというのはあったが、どういう風に、どうリカバリーするか、という事の大切さを学んだ。」と、意味のあるコミュニケーションを取ることの重要性を教えてくれた。
そうしたものが、気持ちを強く支える柱となり、選手たちの良さ、特徴、取り組んできたことが大事な場面ででた。これまでのグリーンウイングスは、試合中の劣勢場面や最終盤の競り合いで、ずるずると後退しがちだったが、むしろ、しっかりと取りきる、勝ち切る強さとなっていたのも、とても頼もしかった。
埼玉上尾戦では、相手セッターにツーアタックを決められた直後、大卒ルーキーでセッターの閑田千尋が、同じくツーアタックでやり返した場面があった。閑田は、「自分は攻撃的セッターなのでツーアタックをやりたかったが、ちょっと我慢するよう指示が出ていたが、ゴーサインが出たのでやり返した(笑)」と振り返った。自分の特徴、強気の姿勢をしっかりと出し、その後の勝利へと繋げた。
仙台戦では、劣勢だった第2セット最終盤。松尾奈津子と正木七海のコンビネーションで、逆転でセットを奪い、勝利に導いた。試合後、松尾は、「この3試合、(正木)七海とずっとコンビを組んでやってきたので、最後に出せて良かった」と笑顔で教えてくれた。一方の正木も、「ずっと練習をしてきたが、皆でやった時にできていなかった。でも、最後の場面で出すことができた」とこちらも喜んだ。
勝負所で、自分の良さを出せる、取り組んできたことを結果につなげられる、そうした事ができるのも、個人の取り組みや調子の良さもあるが、やはりチーム全体としての意識だったり、雰囲気だったり、そういったものがより選手たちの良さを引き出すのだろうと感じた。
既報の通り、チームは、SVリーグ参入に向け、体制を強化している。
元PFUのアウトサイドヒッター・髙相みな実選手をはじめ、複数の新加入選手を加えるなど、補強を進めるとともに、これまで不在だったGM=ゼネラルマネージャーに、前PFU監督だった坂本将康氏を迎え、コーチ陣も増員するなど、体制強化にも取り組み、グリーンウイングスにとって、初めてとなる国内トップリーグ参入に向け、準備を進めている。
新チームが始動して、まだ数カ月だが、斎藤真由美監督が掲げる、「全員バレー」に、新たな力が融合し、刺激となり、選手、チームにプラスになっているようだ。
藤井は、「新しいコーチや新加入選手たちが来て学びが多い、それを体現する事ができて嬉しい」と話し、松尾は、「今までやったことがないノウハウや、知識、考え方を伝えてくれている。頭の部分でもプラスになる事が多い」と話す。また、閑田も、「コーチ陣からも、細かく、かみ砕いていただくなど、指導してもらい、それが出たと思う」と新体制の効果も聞こえてくる。さらに今後、どのように選手たちの成長曲線を描いてくれるか楽しみだ。
もちろん、今回の結果で、全てが判断できるわけではない。V・サマーリーグに参加している各チームの事情は異なる。上位チームは日本代表が不在で、若手中心の錬成目的のチームもある、グリーンウイングスにしても、外国人選手をはじめとする、新加入選手もこれから加わり、SVリーグ開幕の姿からはまだほど遠い。それでも、今回、グリーンウイングスが見せてくれた結果、姿は、初めてのトップリーグに挑むにあたり、彼女たちの本気度を十二分に感じさせてくれるものだったと思う。
SVリーグは、これまでのV2では感じることのできない、ハイレベルなものを求められるだろう。そう簡単に、勝つことはできない、思うようにいかない戦いだというのは十分に理解している。ただ、チームは、初年度の目標として、プレーオフにあたるチャンピオンシップ進出となる「8位以内」を目標に掲げた。そして、冒頭の目黒の様に、選手たちは、10月の開幕戦での勝利を強く意識している。
白岩は、「開幕戦を絶対勝ち切る。それが、自分たちの目指すべき所というのはスタッフとも話をした。開幕戦をしっかり勝ち切るために、サマーリーグを良い経験で終わらせず、開幕戦につなげたい。」と、グリーンウイングスが一丸となって、絶対に勝利を掴むという強い思いで開幕戦に向かっている。
過去の成績で言えば、グリーンウイングスは、SVリーグの「12番目」のチームかもしれない。ただ、SVリーグのメンバーとして認められた以上、過去の成績など関係なく、見るべきは、これから始まる新たな時代、すなわち、未来でしかない。サマーリーグの準優勝を更なる力と自信に変えて、グリーンウイングスを誇りに思うみんなで、まずはSVリーグ開幕戦の勝利に向け進んで行こう。