ホームでいわきに敗れたザスパは、7連敗、9試合勝ち無しとなってしまった。7連敗はクラブワーストタイ記録(今回含め4回)だ。来る所まで来てしまったというのが素直な心境だ。ただ、一方で、J3に降格してしまった2017年よりも、どうにかなるはず、なんとかなるのではという期待感もあったりする。
この辺りの捉え方は難しい。今の状況でそんなことを言えば、「その気の緩み、甘さ、隙があるから勝てないんだ!」と厳しい言葉をもらいそうだ。それでも、彼らの力はこんなものではない、ひとつ噛み合えばという期待感を持っている。練習に行けば、彼らはひとつにまとまり、懸命にトレーニングしている。自らのために、応援してくれるサポーターのために。その姿を見て、感じているから、私はまだまだこのチームに希望を持っているのだと思う。
現状、多くの課題はあるが、武藤覚監督は、その中でも、攻撃面の改善に力を注いでいる。
武藤監督は、いわき戦を振り返り、「勝ち点を取らなければいけない試合だった。前半は悪くなかったし、チャンスもあった。ただ、シュートまで行けなかった。そこが課題だ。」と語った。
リーグ戦におけるここまでのザスパの1試合平均シュート数は、7.9本で、リーグダントツの最下位だ。最多は、千葉で16.7本、ザスパのひとつ上、19位の栃木でさえ、10.4本と二桁に届いており、深刻さは明らかだ。
ここ最近のザスパは、ボールを保持する事、繋ぐ事、動かす事に力を注いできた。相手に対策され、相手を剥がす事、運ぶことが難しくなると、チャンスを作る機会は減り、どんどん押し込まれ、ラインは下がり、自陣ゴール前で動かすのが精一杯というのが現状だ。
ゴールが取れなければ、勝利はない、果ては、引き分けで得られる勝ち点1すら積むことができない。
状況を好転させるためには、全体を押し上げなければならない、相手エリアでのプレータイムを増やさなければいけない、後ろではなく、前に進まなければならない、パスよりも、シュートを選ばなければならない、人をかけるのは自陣ゴール前ではなく、相手ゴール前だ。もちろん、チームもそれは分かっている。この日のトレーニングでも、攻撃の部分、前への意識、そういったものを全員で表現しようと熱心に取り組んでいた。
武藤監督は、「前に出て行く事、追い越す事、自分で仕掛けることが大事。ボール取った後の前への推進力を付けないと点は取れないと思う。意識付けの部分はみんなで持っていかないといけない。」とトレーニングの狙いを教えてくれた。
自分たちへの変化を促すとともに、クラブは、補強という形で現状を打破しようと動いた。ザスパは、20日に、J2清水から昨シーズンまでザスパでプレーしていた川本梨誉を育成型期限付き移籍で呼び戻した。
ザスパでは2022年途中から1年半に渡りプレー。高い技術とゴールへの貪欲な思いを武器に、チームに勢いをもたらしてくれた選手だ。
武藤監督は、「ザスパの事を知っている選手だし、チームも、彼の事も知っている。プラスになってくれればと思う。清水で経験した事もそうだし、今、うちに足りないものを出してもらいたい。」と期待を寄せた。
一方の川本も、「ザスパの事はずっと気にしていたし、選手たちとも連絡を取っていた」と状況は理解している。その上で、「やることははっきりしている。どこで使われようと、自分がやるべきことは、ゴールや勝利につながるよう貢献する事だ。どんどんシュートを打ちたいし、自分はポジティブな選手なのでそういう所も出したい。」と強い意欲を見せてくれている。
早ければ、次節・秋田戦での出場が可能だ。一緒に戦った選手も多い、チームへのフィットも問題はないだろう。個でも違いを出せる選手だ。良さを存分に出して、チームにゴールと勝利をもたらしてもらいたい。
負けが続いている今は、何を言われても返す言葉はない。様々な指摘が、我々サポーターの傷口をえぐる思いだ。結果で示す、やり返すしかない。ある選手は、「失うものは何もない」と答えてくれた。前に進むしかない、やるしかない、戦うしかない、苦しくても前に進み、足を振り、シュートを打ち、ゴールを奪う、そして、勝つしかこの状況は変えられない。
とは言え、選手たちも心を持つ人間だ。気落ちする事、へこたれる事、後ろ向きになる事もあるだろう。何度でも言いたい。それを支えられるのは、ファン、サポーターの声であり、拍手であり、ともに戦う強い思いだと。それぞれの場所で、ともに戦い、今度こそ、ゴールと勝利を掴もう。