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SASAmemo 天皇杯・浦和戦を思い出にしない。ーザスパクサツ群馬 練習レポ

「昨日の試合を思い出にしちゃだめだよ。」

天皇杯3回戦で、J1浦和に1‐0で勝利し、金星を挙げた翌日、大槻毅監督は、選手たちにそんな言葉を投げかけたという。

「周りは浦和に勝ってすごいと言ってくれるかもしれないが、リーグ戦を見れば18位、まったく良くない。浮かれちゃだめだよ。」

「あと20試合しかない。もっと自分たちを信じて頑張れ。」

練習の冒頭、集まった選手を前に、時折、語気を強めながら、そして、身振り、手振りを交えながら大槻監督は選手たちにメッセージを送っていた。

天皇杯でJ1チームを撃破したという事実あるが、リーグ戦では6試合勝ちがなく、直近12試合で1勝しかできておらず、18位と低迷している事実もある。天皇杯の勝利で得たものを、どうリーグ戦の結果につなげるかを考えなければいけない。

リーグ戦でもレギュラーとして活躍し、天皇杯でも2試合スタメン出場を続ける田中稔也は、浦和戦の勝利について、「勝ったのは非常にうれしい。得点シーンも、練習でやっているポジティブトランジションで取れた」と日ごろの成果がゴールと勝利につながったことに手ごたえを感じている。

だからと言って、リーグ戦も簡単に勝てるかといえばそうは考えていない。

「リーグ戦では対策されてきて、どうやって崩すかが大事。浦和戦のようにハードワーク、献身さを出さないといけない。当たり前のことを当たり前にやらないといけないし、その中でも、技術、判断も必要になる。」と、さらなる向上の必要性を口にする。

それとともに、「(若手主体で勝ったことは)絶対に刺激になる。競争が生まれることでいいチームになる。天皇杯をきっかけに、もっと上に行きたいし、みんなでハードワークして勝ちたい」と、天皇杯の結果を思い出にせず、リーグ戦の結果につなげようと意欲十分だ。期待しよう。

一方、浦和戦でメンバー入りし、経験豊かな渡辺広大は、結果を冷静にとらえている。

「若手選手が中心に出たゲームで、ある意味戦いやすく、割り切って、はっきりした戦いができたと思う。それに天皇杯という舞台は、上位チームはやりづらい、ザスパにとってはホームでやれたのも大きな要因だったと思う」と、リーグ戦とは異なる「特別さ」を教えてくれた。

それでも、「その中で勝てたのは非常に雰囲気も良くなるし、いい循環になる。非常に大事な一戦だったと思うし、ああいった雰囲気の中でサッカーができて、『あれがJ1だよ』というのをはじめて感じた選手もいたと思うし、その中で臆せずやってくれたと思う」と、勝利から得られるものの大きさ、そして、いわゆる若手選手と呼ばれる、まだまだ経験値の少ない選手たちの頑張りを称えることも忘れなかった。

そして、大槻監督が伝えたメッセージには、「プライベートも含めて、隙を見せてはいけない。サッカー選手はすべてがつながっているのだから」と共感する。

ひとつの勝利に浮かれることなく、リーグ戦で勝ててない現実にしっかりと向き合い、原因を突き詰め、改善していかなければいけない。

この所、取材で多くの選手から聞こえるのは、「練習の雰囲気は悪くない」、「あとちょっと、もう少し、差はわずかだ」という、そんな声だ。手ごたえがあるという意味ではいい事だし、前向きにとらえたいが、そんな現状について渡辺は、「雰囲気良く、練習の中ではやれているが、試合では出せていない。(失点してから反撃する)ビハインドメンタリティはあるが、それでは遅い。そうなる前にやらないといけない。そこに気づいて、みんながもっとやらないと。」と警鐘を鳴らす。

また、「監督に求められているものはあるけれど、それだけでなく、選手自身がもうちょっとやらないといけない。ピッチは自由に表現できるところなんだから。」と話す。

相手に研究されている今、ベースとなる組織を大切にしつつ、個性を表現していくことで、より、ザスパが組織として目指すべきサッカーも生きてくるし、相手を上回る強さになっていくのだ。選手それぞれの個性を放つ、時に独善的にでもいいと思う。そんな野性的なプレーをもっと見たいと思うのは私だけではないはずだ。

ザスパというクラブは、魅力もあるが、資源も限られたクラブだ。今あるもの、今いる選手が成長しなければ、ゴール、勝利という結果にはつながらない。

「若い子は、去年は勢いだけだったけど、頭を使ったり、助言を求める選手も増えてきてますよ。ここからだと思いますよ。」と、渡辺はチームの明るい兆しも教えてくれた。そして、「まだ僕もベテランだと思ってないですから。元気に動き回って、試合に出たいです。」と、自らの意欲も示してくれた。多くのサポーターも、渡辺広大のプレーを求めている。

浦和戦の勝利ですべてが好転するわけではないが、そこから得たもの、感じたもの、きっかけになったことをプラスの力に変えていき、チーム、選手、そして、サポーターも、さらに成長していこう。皆で、ゴールと勝利を掴み、ここから這い上がっていくのみだ。

 

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