【THESPA】会長杯決勝は、天皇杯の出場権を掴むとともに、自らの価値を示す戦いだ

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ザスパ群馬は、11日日曜、前橋市のアースケア敷島サッカー・ラグビー場で行われる群馬県サッカー協会長杯サッカー大会の決勝戦で上武大学と対戦する。この試合で勝てば、群馬県代表として天皇杯に出場する。

国内サッカー日本一を決める天皇杯は、J1、J2クラブには本大会への出場権があるが、J3クラブにはない。出場するためには、都道府県代表の座を勝ち取らなくてはならない。

沖田優監督は天皇杯の位置付けについて、「大事な公式戦に変わりはない。天皇杯は、ひとつずつ勝ち上がるのが簡単ではない。まずは本選に出られるようにしたい。相手のタイプ、グランド環境など普段とは違うので、自分たちのサッカーもある程度表現しつつ、勝ち上がることにフォーカスして、そして、次のリーグ戦にもつながるようにチーム全体の力も示したい。」との認識を示した。

また、「ルヴァン杯もそうだが、誰が出ても同じようなサッカーができるというのはわかっている。全員の力を活用したいし、最近、リーグ戦で出場時間の短かった選手もチャンスがあると思う。」と話している。

メンバー選考はこれからだが、直近のリーグ戦とは異なる選手構成で試合に臨む事が予想される。

先のルヴァン杯・長崎戦では、小西宏登、野瀬翔也、キム・ジェヒ、そして、ゴールを決めた小野関虎之介ら、若手選手たちが躍動感あふれるプレーでアピールに成功し、その後のリーグ戦での出場機会を増やすことにも成功した。

沖田監督が話す様に、この所、リーグ戦での出場機会があまりつかめていない選手たちにも、会長杯決勝戦は、チームとして代表の座を掴むだけではない、自らの価値、力を示す大事な戦いになる。

昨シーズン途中に、J2長崎から期限付き移籍で加入し、今シーズンも、移籍期間を延長してザスパで戦う事を決断した瀬畠義成も、日曜の試合で巻き返しを誓うひとりだ。

「今は、試合に絡めていないのが現状。リーグ戦もそうだし、自分の価値を上げるためには、相手どうこうではなく、公式戦で何ができるかがサッカー選手としては大事。試合まで、短い中だが準備したい。」

今シーズンは、コンディションの関係で、少し出遅れたが、3節・長野戦で途中出場し、今シーズン初出場を果たすと、4節・鹿児島戦から3試合連続でスタメン出場した。だが、以降は、途中出場の1度のみで、メンバー外が続いている。

「今は、リーグ戦からは遠のいている。自分が必要だという事を会長杯決勝戦で証明したい。」

J3に降格したものの、クラブは瀬畠の活躍、能力を高く評価し、慰留に努め、彼も、それに応え、J3であってもザスパでの戦いを決断してくれた。

ザスパではセンターバックでの起用が続いているが、元々はボランチの選手で、足元の技術が高く、展開力があり、ゲームメイクができる選手だ。そして、新しい事にチャレンジする意欲的な選手で、そのための努力を惜しまない選手だ。そうした、瀬畠の力、姿勢がもっともっと、チームに還元されなければいけない。

「サッカーはチームスポーツ、自分はひとりで何かできるわけでない。周りと協力しながら何ができるか、その中で良さを出したい。如何に仲間とコミュニケーションが取れるか、躍動できるかがテーマだと思うので突き詰めたい。」

会長杯決勝戦では、自らの良さも出しながら、コミュニケーションの部分でもチームをまとめ上げ、リーグ戦でもチームを押し上げる存在なんだという事を示して欲しい。期待しよう。

今シーズンの高卒ルーキー・新井夢功も、会長杯決勝戦でチャンスを掴もうと闘志を燃やしている。

「今度の試合は、自分がプロデビューするための大事な試合だと思っている。アピールして、良さを前面に出して、監督に使ってもらえるように準備したい。」

地元・前橋市出身で、高崎健康福祉大高崎高校を経て、ザスパに加入したが、抱えていたケガからのリハビリもあり、個別でのトレーニングが続いていた。そして、ここ最近は、コンディションも上がり、全体練習の中で、先輩たちにも物怖じしない、意欲溢れるプレーで評価を上げてきている。

「まだまだ未熟な所は多く、選手との関りにも課題はあるけど、先日の練習試合では、アシストもできるようになってきたので、そうした事を継続したい。ちょっとずつ、できることが増えてきたので自分のストロングである攻撃の部分で、アシストしたりする所を磨きつつ、課題にも向き合っていきたい。」

登録はDFだが、攻撃的なポジションもでき、キックの精度もあるので、セットプレーのキッカーとしても期待できる選手だ。攻撃的な部分で出来ることが増え、評価が高まれば、高校の先輩・小野関がそうであるように、カップ戦から一気にリーグ戦でのチャンスをつかむこともあり得るだろう。

「リーグ戦にも、絶対出たい。そのためには、練習からもっとこだわらないと絡んでいけない。高卒だから、まだリーグ戦には、出られないと思う人もいるかもしれないが、その中で、リーグ戦にも出て、活躍している姿をサポーターの皆さんに届けたい。」

プレーの平均点が高いだけでは面白くない。我々、サポーターは、その選手だけが持つ、突き抜けた、特別な部分に興奮し、沸き上がり、もっと、もっと、その選手のプレーが見たいと思うものだ。ザスパの高卒ルーキー・新井夢功は如何なるインパクトを届けてくれるのか。彼がピッチに立てば、サポーターにとっては、試合の楽しみがひとつ増えることになる。

チーム最年長・35歳の小柳達司にとって、今シーズンはタフな時間が続いている。

昨シーズン、プロデビュークラブのザスパを救おうと3度目の復帰となり、今シーズンも、プレーと精神面で、クラブ目標達成のために奮闘してくれているが、残念ながらリーグ戦では、4度のメンバー入りのみで、試合出場がない。それだけに、彼にとっても日曜のゲームは、大事な時間になる。

「今シーズンは、まだ公式戦に出ていないので、いちプロサッカー選手として、結果を出すのはもちろんだし、自分の存在意義をクラブにも、スタッフにも、サポーターにも、支えてくれている家族にも、しっかり見せたいと思っている。試合まで、日数があるので、しっかり準備して、ピッチに入るまでに、『今日は大丈夫だ』という所まで持っていきたい。」

今シーズンのザスパは、J3降格のタイミングも重なり、メンバー構成の大半を25歳以下の若い選手へとシフトした。30代の選手は、小柳含め、4人しかいない。プロの世界で活躍するのに、年齢は関係ないが、それでも、彼らには、これまでの経験値がある。選手としても、チームとしても、良い時、上手くいかない時、様々な経験をしてきている。

そして、その上、小柳には、強いザスパ愛がある。このクラブをさらに良くしたい、チームをもっと浮上させたいと、常日頃から思っている。ポテンシャル、可能性がありながら、今のクラブ、チームに、まだまだ足りていない、欠けているものを、プレーだけでなく、言葉でも、立ち振る舞いでも発信し続けてくれている貴重な存在だ。

「経験もあるが、自分だけ良ければいいと思っていない。チームが、自分ひとりの力で変えられるのはコーチングだし、そこが、強みだと思っている。『しゃべれ!しゃべれ!』と言っているがピッチレベルでできている訳ではないので伝えている。」

練習中、ピッチ内の声に耳を傾ければ小柳の声がよく聞こえる。それは、周囲への要求、指示よりも、「こうした方がいい」、「これができないといけない」と言ったコーチング、指導的な要素が多く含まれている。練習の合間や練習後でも、若い選手に歩み寄り、技術面、思考面を惜しみなく伝えている姿をよく目にする。リーグ戦で、自らが置かれている状況を考えれば、簡単にできる事ではないが、小柳は、それを当たり前の様にやる。故に、若手選手たちからの人望が厚い。

ここ数年、苦しむザスパの中で、支え、押し上げてきた存在は、自らにも、周囲にも向き合える、経験ある選手たちだと感じている。だから、個人的にも、もっと小柳がリーグ戦で活かされて欲しいと思う。そして、小柳にも、日曜の試合で、プレーの部分でもやれるんだという所を示して欲しいと願う。

天皇杯は、一発勝負だけでなく、カテゴリーの垣根を越えたチーム同士が当たる難しさがある大会だ。日曜のゲームで対戦する上武大学を率いるのは、元日本代表で、監督としても、大分、清水、栃木などJクラブを率いた実績のある田坂和昭監督だ。

「Jを経験している監督なので勝負強さがあり、奇策もあるかもしれないが、面食らわずにやりたい。ギリギリの戦いにも慣れている人だと思うし、J3が相手というのも、大学生には戦いやすいと思う。」と小柳は警戒する。

プロが大学生に勝って当たり前。だからこそ、プレッシャーがかかる、難しさが生まれる。それでも、小柳は、全ては心の持ちようだと説明する。

「カテゴリーが上のチームに向かう方が、何事もやり易いのは確か。ただ、考え方ひとつで、『やり易い』、『やりにくい』は変わる。相手がどうあれ、自分たちのやるべき事をやり、心持ち、技術、フィジカルで上回るつもりがあればいいと思う。そう簡単ではないけれど、上回らないといけない。そういう気持ちでやっている。」

日曜のゲームで、小柳が、ピッチに立ち、プレーとゲームコントロール、そして、チームを落ち着かせ、勝利に導くリーダーシップを見せて欲しい。そして、リーグ戦でも同様に、クラブ目標であるJ3優勝、1年でのJ2復帰へ導く支えとなって欲しい。

瀬畠義成、新井夢功、小柳達司、この3人だけでなく、日曜の試合でピッチに立つ選手のほとんどが、それぞれに、今シーズンの悔しさ、ここからの飛躍、巻き返しを誓い、勝利のために力を尽くそうとする選手だろう。ぜひ、サポーターの皆さんには、彼らのそんな思いも感じながら声援を送り、ともに天皇杯への切符を掴んでもらいたい。

<今後の試合予定>
第30回群馬県サッカー協会長杯サッカー大会・決勝戦
5月11日(日) 14:00 ザスパ群馬 vs 上武大学(アースケア敷島サッカー・ラグビー場)

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