新シーズンに示してもらいたいことは何かと聞かれれば、大きく2つある。ひとつは、「昨シーズンの悔しさを晴らしたい」という思い。そして、もうひとつは、超・攻撃的サッカーを掲げ、新たなスタートを切る「新しいザスパ群馬の姿」だ。
2025シーズンのJリーグが開幕する。ザスパは、15日土曜、午後2時からホーム・正田醤油スタジアム群馬にFC琉球を迎え、新シーズンのスタートを切る。
リーグダントツの最下位で、2度目のJ3降格となってしまった昨シーズン。チームは、選手のみならず、監督をはじめとするスタッフ、さらに強化も一新し、新たなザスパを構築すべく動き出した。去年、ザスパで悔しさを味わった者はもちろん、ザスパに集った、新たな仲間たちも、それぞれに悔しさを味わってきた。そんな仲間とともに、「超・攻撃的サッカー」を掲げ、1ヶ月超に渡り準備をしてきた。
「作り上げてきたものをどれだけ出せるか。100%出せれば勝てる自信はある。出し切りたいと思う。」
J3岩手から加入した加々美登生は、落ち着いた口調の中に、確かな手応えと強い思いを込めてくれた。自身は、プロ入りを果たした岩手での4年間に別れを告げ、群馬にやってきた。中心的な存在として活躍してきたが、昨シーズン、チームはJ3最下位で、JFLへ降格。彼もまた、ザスパ同様に、悔しさ、もどかしさを感じてきた。
「去年まで、ネガティブな事だったり、チーム状況も、自分の成績もよくなかったが、今年は、上だけを目指して、必ず自分は上に行くんだという目標がある。必ず結果を出したい。」
もっとできる、もっとやれる。周囲の評価は高く、期待の大きい選手だ。新たなシーズンの始まりは、ザスパ同様、彼もまた、強く、たくましく、生まれ変わるためのスタートだ。
「みんな、意欲的に取り組んでいる。今年は、コミュニケーションも多く必要なサッカーだ。それはグラウンドの中で現れていてポジティブだ。」
今季、チーム最年長の小柳達司は、開幕直前のチームをそう分析する。昨シーズン途中、プロ入りしたクラブの支えとなるべく、意を決してザスパにやってきてくれたが、チームを残留に導くことができず悔しさを味わった。なによりも、最後まで、信じてともに戦い続けてくれたサポーターへの申し訳ない気持ちが強い。
「去年は、サポーターも、クラブも、自分たちも、すごく悔しいではいい表せない思いをした。今年は、一緒に、多くホームで喜びたい。」
今シーズンは、期限付き移籍から完全移籍に切り替えた。誰よりも強いクラブ愛をもっている。それは、彼がこの場所で、多くのことを学び、経験してきたからだ。小柳は知っている。正田スタで、皆が一体となった時に生み出されるエネルギーを、そして、そのエネルギーが、選手たちの背中を押す力となり、何ものにも代えがたい勝利の喜びを味わえる時間になることを。J3優勝、J2復帰には、サポーターの力が必要だ。そのために、プレーと経験でチームを支え、勝利をつかみ、サポーターの笑顔を取り戻しに行く。
「毎年、開幕はワクワクする。新しいチームに来て、新しい事をやり始めた所、こういうサッカーをするんだぞという所を見せたい。」
2025シーズンのザスパでキャプテンを務める米原秀亮は、開幕戦を待ち遠しくしている。生まれ育った熊本から、5年半過ごした松本を経て、心機一転、群馬を舞台に新たなチャレンジが始まる。
キャリアを振り返れば、悔しさを多く味わってきた。J1からJ2、そして、J3と降格も経験した。仲間とともに、J2、そして、J1復帰を目指したが、ケガで思うように力を発揮できないもどかしい時間もあった。昨シーズンで言えば、手にしかけていたJ2復帰が、あと少しの所ですり抜けていった。そうした意味では、昨シーズンのザスパ以上の悔しさを彼は味わってきた選手だ。
「まぁ、昇格したいですね。」
どういう1年を過ごしたいか。そんな記者の質問に、少し思いを巡らせた後、ポツリとそんな言葉が出た。
「去年の悔しい思いもある。どういうチームが昇格できるか、ある程度わかってきている。キャプテンを任されている中で、毎日、自分に問いながら頑張りたい。」
始動からここまでのチームを見ていれば、彼がキャプテンであるだけでなく、J3優勝、J2復帰に向けて、ピッチ上でも中心的な存在であることは間違いない。それはまた、キャプテンとしても、プレイヤーとしても、良い時も、上手くいかない時も、どんな時でも、自分のためだけでなく、みんなのために、様々なものを背負い、重責、重圧とも戦わなければならなくなる事にもつながる。
キャプテンひとりにそれを背負わせるわけにはいかない。どんな時も、キャプテンをはじめ、このチームを支える強い思いと応援がサポーターには求められる。そうすれば、我らがキャプテンの思いを現実にし、彼のこれまでの悔しい時間を至福の時間へと変えられるはずなのだから。
「相手どうこうではない、自分たちはいい状態だ。相手はどうあれ、自分たちをどう出すかに注力している。いかに自分たちのサッカーを表現できるかだ。」
沖田優監督が目指す「超・攻撃的サッカー」は、攻撃をもって、ボールも、相手も、試合も支配するそんなサッカーだ。相手に合わせることよりも、如何に自分たちのサッカーを貫けるかが重要だ。理想ではあるが、簡単ではない。それでも、始動からこの1ヶ月超、選手たちのマインドをしっかりと向けさせ、準備をしてきた。
「自分たちのサッカーをお見せできる初戦だ。(選手たちには)楽しんでいる姿を集中してみせて欲しい。サポーターの皆さんに見てもらうという意味では、やはり開幕だという思いはある。楽しみだ。」
話をすれば、優しい笑顔でどんな話にも付き合ってくれる。サッカーへの思いも熱く語ってくれる。だが、練習試合は基本的に非公開、直近も、非公開練習で外部へ手の内は明かさず、開幕へ向け、チーム作りに心血を注ぎこんできた。沖田ザスパが目指す「超・攻撃的サッカー」はまだまだ未知なる部分が多い。
だが、それもいよいよ明らかになる。J1基準のサッカーを意識し、自分たちが主導権を握る、攻撃で相手を圧倒する、2点、3点と失点しても、4点、5点と取り返すサッカーをする。そして、J3優勝をもって、1年でJ2に復帰する。それが、今シーズンの、そして、これからのザスパ群馬のサッカーだ。
「1年でのJ2復帰は簡単ではない」、「今のJ3は簡単なリーグではない」
そんなことは言われなくてもわかっている。皆でやると決めてスタートしたのだ。そして、チーム、選手たちは、そのサッカーに前向きに、全力で取り組んでいる。ならば、応援する私たちも、そんな彼らを力強く後押しするのみだ。皆で悔しさを晴らそう、そして、ザスパの新しいサッカー「超・攻撃的サッカー」を示そう。さぁ、2025シーズン、そして、新たなザスパ群馬の始まりだ。